もともと説明されていることはなるべく省きます. そのあたりは AZIKの説明 その他のインターネット上の文書をご覧ください.
現在, 日本語の入力方法は多様です. 私も以前, 少しずつですが試してみたことがあります. 現存する日本語入力方法は仮名の配列を工夫したものがほとんどのようでした. 試してみると, まさにそのことにより, 自分のようなユーザーにはあまり適さないことがわかりました.
理学系の人間の多くはそうだと思いますが, 私は日本語とアルファベットが混じった文書をよく作ります. 特に数物系では文章整形ソフト LaTeX を用いて講義資料やノート, 論文を作成します. それは, 日本語とアルファベット (数式などを書く命令) が頻繁に入れ替わる文書となります. その際, 日本語に特化した配列を用いていると, 和文/欧文の切替えのたびに頭も切替える必要が生じ, 疲れてしまいます. そのため, ローマ字配列ベースの日本語入力が 適していると私は考えています. また, 私自身はローマ字から仮名を経ずに直接漢字に変換するIME (*) を好んで使っていますが, そのようなIMEには特に相性がよいと感じています.
(*) 私は大学院生時代から Emacs+Wnn+boiled-egg を愛用してきました. 現在は, 同等の機能を実現する Canna+YC を利用しています.
さて, AZIK の思想で私がもっとも素晴らしいと感じている点は, 音便を音便として (すなわち前の音の修飾, あるいは音楽に例えれば装飾音や articulation のようなものとして) 設計されていることです. AZIK では「音便」とは呼ばれていませんが, 撥音便と長音便 (~ 二重母音) が仕様に入っています.
例:
"p"
→
「おう」/
"q"
→
「あい」,
であるので,
"jptq" で「状態」となる。
"w"
→
「えい」/
"z"
→
「あん」,
であるので,
"kwsz" で「計算」となる。
使ってみるとわかりますが, これらを加えるだけで, 作文中のストロークを減らし, またリズムがよくなります. 日本語の本質的な構造に立脚した設計になっているからなのだと思います.
さて, 私は上の考えを拡大解釈し, 通常は音便と捉えていないものも 音便と捉えるのが良いのではないかと考えました. 我々が書く文章においては, 単語の多くは音読み漢字の組合せからなります. 少し考えると, 1つの漢字の2つめの音は, 上記3つの本来の音便以外では, 「く」「つ」が非常に多いことがわかります. 今回これを, 「く音便」「つ音便」と解釈しようじゃないか, ということです. (*)
(*) なお, この解釈は言語学的にも意味があると私は考えています.
このような「く」「つ」は, 無声化してモーラも短くなることが多いのです
(特に単語の最後や破裂音の前でしょうか).
無声化するくらいになると,
もはや前音と1つの音節をなしている思われます.
例: 熱烈 [nets(u)-rets], 進学 [shin-gak], 三千子 [mich-ko], 奈津子 [nats-ko].
また, 漢字にこのように音のバリエーションが少ないことは,
漢字を輸入する際の歴史的経緯によるものと考えられます.
そのあたりとの関連を考察することも楽しいでしょう.
なお, い段とえ段に対しては, い段の「き音便」「ち音便」を優先的に, あるいは, う段音便との両方を考えた方がよいと思います (なお, これらの多くは本来の意味で音便でしょう. 例: 越 (えつ) → 越後). 私は自分では「-いく」「-いき」「-いつ」「-いち」 「-えき」「-えつ」を用意しています.
また, う段にはこれら「か行」「た行」音便があまり発生しません. 自分では一応用意はしていますが (副/ 欝/ 靴).
「く」「き」音便の例:
悪/ 育; 域 / () / () ; 液/ 奥
各/ 菊; () / () / () ; ()/ 刻
学/ (); () / () / () ; 劇/ 極
客/ - ; - / () / - ; - / 曲
逆/ - ; - / () / - ; - / 玉
策/ (); 式 / () / () ; 関/ 足
()/ 軸; 直 / () / () ; ()/ 族
尺/ - ; - / 祝 / () ; ()/ 職
弱/ - ; - / 塾 / () ; ()/ 辱
...
上記の思想的な部分がに比べ, キーバインドは あまり重要ではありません. 究極的には個人個人で好きなように割り振ればよいと思います. 私が使っているキーバインドも少しずつ変わってきているし, これからもそうだと思われます. いずれにせよ, 2つめの打鍵で意味を持つキーが大幅に増えるため, いかなる原則を立てるにせよ妥協が必要となります (オリジナルの AZIK でも「妥協」が優れた設計思想の一部 だと個人的には思っています).
現状, 大まかな原則は以下のようです.
なお, 私は今のところ "v" を
"tv" とぅ /
"dv" どぅ
などに使っています.
"b" は現状ではまったくフリーです.
お好みのものにバインドなさるとよいでしょう.
(仮名系の入力方法については, 私が正しく評価できないので省略します. ひらがなの数を参考にしてください).
ことば/ ひらがな/ 通常のローマ字入力/ オリジナルAZIK/ K4数字は文字数/ストローク数です (それだけが打ちやすさではないですが). しかし, 漢語については通常入力に比べ, 大体コンスタントに 2/3-4/5 程度になります. また, ひらがなの数とほぼ等しくなることも起きます.(*)
(*) このことは, 仮名系の入力方法に比べても, AZIK および AZIK-K4
が優位になりうることを示しています.
AZIKサイト「効果」の例などを参照してください.
考察: 日本語の50を越えるひらがな (濁点, 半濁点を含めると.
拗音を含めるともっと多数) に 30-40
のキーをひとつひとつ対応させることはできない.
やはり, シフトも含めると2キーで対応せざるを得ない.
よく使うひらがな1文字に1キーを, そうでないものに2キー (シフト)
を対応させる戦略に進むことになろう.
これに対し,「広義音便」を利用して1音節 (1漢字) に
2-3キーを対応させようという戦略は,
ひらがな2-3文字に 2-3キーを対応させることになるため,
もっと有利になりうる.
私はコンピューターにさほど詳しくないので, 私が使っている実装は相当 ad hoc で統一がとれていません. また, 適切な方法かどうかも疑わしいです. さらに, OS の更新に伴って実装方法を変更しなければならなくなることもあります (ありました).
オリジナルの AZIK が導入できる環境なら似た方法でできると思うので, ご自身の環境に合わせて工夫なさるのがよいと思います. [ただし, 調整中にシステム設定を壊し, キー入力不能のマシンになったりすることもありえますので, 慎重に, かつ at your own risk で.]
参考にはならないと思いますが, 下記は2014年現在私がとっている方法です. 意味がわからない場合は無視してください (問合せもご勘弁ください).