■エントロピー駆動の分子吸蔵

結晶性高分子P4MP1 ( isotactic poly (4-methyl-1-pentene) ) は、結晶の密度が非晶の密度よりも少しだけ小さいという奇妙な特徴を持ちます。
これは、上図のように枝分かれした側鎖に起因すると思われ、この側鎖によって空隙の多い構造が生まれるようです。我々は、この高分子がÅスケールの空隙を自発的に持つことを利用して、液体分離ができるのではないかと考えています。
化学的な構造が類似している油同士の分離は通常難しく、沸点の違いを利用することが多いのですが、統計物理学の考え方、特に枯渇相互作用によって、新しい観点からの液体分離法が可能ではないか、という研究をしています。
慶應義塾大学 プレスリリース(2019/12/6)「サブナノ空隙を用いた新しい液体分離の考え方を提唱 -ポリオレフィン結晶内空隙を用いて鎖長の異なるアルカンを分離-」
新聞掲載:化学工業日報 2019年12月18日朝刊4面 「慶応大 体積の差で液体分離 ポリオレフィン膜を活用」
千葉研究室では、結晶性高分子の空隙だけでなく、カーボンナノチューブ(CNT)の空隙を使った場合の選択的吸蔵も研究しています。CNTを使うと空隙の直径を変化させた場合について研究できます。
■水の蒸発と湯気

上の写真はコーヒーの表面の湯気です。よくみると、水面に1層張り付くような湯気が見えます。
この1層の湯気は、10μm程度の水滴が規則正しく並んで浮遊したものであることが知られています。古くは寺田寅彦が「茶碗の湯」というエッセイの中でこの湯気について述べています。
千葉研究室ではこの湯気の構造、特に浮遊して2次元に規則正しく並ぶ理由について研究しています。
■高分子溶融体の構造の圧力依存性
慶應義塾大学 プレスリリース(2012/2/28):「溶融高分子の新しい構造変化を発見-加圧によるナノスケールの構造変化-」
新聞掲載
化学工業日報 2012年2月29日朝刊3面 「溶融高分子の構造変化発見 加圧で疎から密に 慶大など」
日刊工業新聞 2012年3月6日朝刊19面 「圧力で高分子変化 多様な用途拡大を期待 慶大など発見」
マイナビニュース(2012/3/1):「高分子の溶融体は圧力の違いで2つの顔を持つ - 慶応大などが発見」