レーザークーリング

レーザー光を用いた原子のクーリングやトラッピングの研究が急速に進んでいる。 原子を数100 nKに冷却したり、ボーズ凝縮も実現されている。 1997年度のノーベル物理学賞はこれらの研究に先鞭をつけた3名の物理学者に、 2001年度のノーベル物理学賞はボーズ凝縮を実現し発展させた3名の研究者に与えられた。

われわれは東大久我研究室と共同でラゲールガウス光ビームを用いた新しい光トラップを開発した。 下図はLG03と呼ばれるモードの光ビームが作るポテンシャルとその断面を表す。 水平方向に光ビームの光軸からの距離、垂直方向に光ポテンシャルの高さを示す。 原子はこのポテンシャルの中央にトラップされる。 従来のトラップに比べ、原子が受ける磁場や光の電磁場による摂動が小さく精密測定や他の応用に有望である。  

われわれもかねてからレーザークーリングの装置を準備していましたが、1998年12月10日にルビジウム原子の磁気光学トラップに成功しました。

現在我々は準安定ヘリウム原子のレーザー冷却の研究を同学科の白濱研究室と共同で進めています。 常温のヘリウム気体を放電して準安定ヘリウムを作るとその初速は1000m/s以上の大きな値となります。 このため、原子をMOT中に捕獲できるまでレーザー冷却(減速)する間に原子は数m以上進むことになります。 このため、装置は巨大となり、原子を集める効率も悪くなります。 我々は、液体ヘリウム直上の冷たいヘリウム気体からレーザー冷却を開始して、短距離で原子を減速する装置を開発しています。 下にその写真を示します。

参考文献

  1. T. Kuga, Y. Torii, N. Shiokawa, T. Hirano, Y. Shimizu, and H. Sasada, "Novel optical trap of atoms with a doughnut beam," Physical Review Letters, 78(25), 4713-4716 (1997).
  2. Y. Torii, N. Shiokawa, T. Hirano, T. Kuga, Y. Shimizu, and H. Sasada, "Pulsed polarization gradient cooling in an optical dipole trap with a Laguerre-Gaussian laser beam," The European Physical Journal, D 1, 239-242 (1998).
  3. Y. Shimizu and H. Sasada, "Mechanical force in laser cooling and trapping," American Journal of Physics, 66(11), 960-966 (1998).
  4. M. Haraguchi, Y. Shibayama, K. Kikuchi, M. Okamoto, H. Sasada, and K. Shiraham, "Production of cold metastable helium atoms in a cryostat" Physica B, 329-333, 34-35 (2003).