学生へのメッセージ
研究のどこが面白い?役に立つ?
約100年前、「物質の磁気の正体(=電子の角運動量)」を探求したアインシュタインらによる根源的な問いから、磁気回転効果が発見されました。アインシュタインはあの有名な相対性理論を構築した理論物理学者ですが、実は磁気回転効果は一般相対性理論と密接に関係しており、効果の本質に一般相対性理論が深く関わっています。回転運動する物質中の電子は、一般相対性理論による時空の歪みの中を運動して磁気を生み出しています。しかし、最先端の高速回転装置が作り出せる回転周波数(〜1秒間に1万回転程度)では地磁気のゆらぎ程度のごく微弱な効果しか生み出すことができません。そのため、最近まで磁気回転効果の応用は難しいと考えられていました。
能崎研究室では、固体表面を伝搬する音波を使って超高速な格子回転運動(〜1秒間に10億回転以上)を作り出し、様々な物質に磁気を生み出すことに世界に先駆けて成功しました。さらに、最新のナノテクノロジーを駆使して電気伝導度がナノメートル幅で変調したナノ傾斜材料を作製し、電子の高速な回転運動を人工的に実現、磁気の発生につなげる研究プロジェクトを進めています。このように、一般相対性理論に裏付けされた「力学的な角運動量」と「磁気的な角運動量」の相互変換に関する研究はまだ始まったばかりですが、従来の半導体デバイスの性能を凌駕する新しいデバイス開発につながるブレークスルー技術として注目されています。
能崎研究室への配属を希望する学生の皆さんへ
能崎研究室は、力学と電気・磁気が融合した新しい分野である“スピンメカトロニクス”で世界をリードする研究成果を多数発表しています。一方で、「ミクロな世界でどのようなメカニズムで角運動量が受け渡されるのか?」、「どんな物質や構造で大きな効果を発現するのか?」など未解明問題が多数残っています。この研究分野では、古典物理学(電磁気学・力学)に加えて、量子力学や統計力学、物性物理学など君たちがこれまでに学んだ知識を網羅的・階層的にフル活用します。つまり、これまでの授業で概念的な理解にとどまっていた物理を実践できるのです。さらに、国内外で大きな国家プロジェクトが進行中であり、若手研究者が活躍できる環境が整っています。実際、大学院生だけでなく4年生が国際学会で発表することも能崎研究室では珍しくありません。このような最先端の研究に挑戦し、将来世界で活躍できる研究者になりたいという野心溢れる学生を待っています!
研究テーマの一例
(1)力学的角運動量と磁気的角運動量の相互変換
(2)電気輸送特性を傾斜変調したナノ傾斜材料を用いたスピン流生成
(3)マイクロ波磁場を用いた次世代磁気記録技術
(4)希土類材料の磁気相転移(強磁性⇔反強磁性⇔常磁性)に伴うスピン物性の変調
(5)スピン流によるナノ磁性体の非線形磁化制御
キーワード
磁性物理学、スピンメカトロニクス、非平衡・非線形スピン物性、ナノテクノロジー
主な研究成果
Observation of gyromagnetic spinwave resonance in NiFe films
Yuki Kurimune, Mamoru Matsuo, and Yukio Nozaki
Physical Review Letters 124, 217205 (6 pages) (2020).
Highly nonreciprocal spin waves excited by magnetoelastic coupling in a Ni/Si bilayer
Shoma Tateno and Yukio Nozaki
Physical Review Applied 13, 034074 (5 pages) (2020).
Nonreciprocal spin current generation in surface-oxidized copper films
Genki Okano, Mamoru Matsuo, Yuichi Ohnuma, Sadamichi Maekawa, and Yukio Nozaki
Physical Review Letters 122, 217701 (6 pages) (2019).
Spin Current Generation Using a Surface Acoustic Wave Generated via Spin-Rotation Coupling
Daima Kobayashi, Tomohide Yoshikawa, Mamoru Matsuo, Ryo Iguchi, Sadamichi Maekawa, Eiji Saitoh, and Yukio Nozaki
Physical Review Letters 119 , 077202 (5 pages) (2017).
卒業生の進路 (2010年以降)
企業
ソニー、日立製作所、富士通、TDK、古川電工、JFEスティール、リコー、ブリヂストン、国際航業、東芝電子管デバイス、NHK、アクセンチュア、キーエンス、サンディスク、京セラ、NEC、tdi、デジタルアーツコンサルティング、など
大学・研究期間
大阪大学(助教、現・福井大学准教授)、日本大学(博士研究員、現・助教)、慶應義塾大学(特任助教)、理化学研究所(博士研究員)、Helmholz-Zentrum Dresden-Rossendorf(独・博士研究員、現・原子力研究開発機構)
その他
独立行政法人製品評価技術基盤機構
主な研究設備
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次世代HDD評価用2.5テスラ
垂直磁石マイクロ波プローバ0.3テスラ面内2軸磁場
1.3 テスラ垂直磁場切替
マイクロ波プローバ0.2テスラ面内2軸磁場
マイクロ波プローバ
(20 GHz VNA-FMR測定) -
0.3テスラ面内2軸磁場
マイクロ波プローバ
(SAW-スピン波変換実験)0.3テスラ面内2軸磁場
マイクロ波プローバ
(20 GHz ST-FMR測定)0.3テスラ面内2軸磁場
マイクロ波プローバ
(スピン起電力測定) -
電磁石回転型プローバ
(SAW-FMR測定)θ, φ軸ステージ回転プローバ
(SOTスイッチング測定)8~300 K温度可変プローバ装置
(マルチスピン物性評価) -
走査型プローブ顕微鏡
(AFM, MFM mode)マスクレス露光装置 レーザー直接描画装置 -
4元超高真空電子ビーム蒸着器 5元マグネトロンスパッタ
(リボルバー型)2インチ磁性3元、非磁性6元
マグネトロンスパッタ
(マルチカソード型) -
12インチ2元、4インチ4元
ロボット搬送スパッタ
(マルチカソード、逆スパッタ室)面内2軸磁場
セミオートプローバ走査型電子顕微鏡 -
Arイオンミリング装置
(基板回転・傾斜機構付)磁場中アニール装置
(最高温度1200℃)高周波プローブ付
マイクロ磁気光学Kerr効果測定
研究室の日常風景(アルバム)
★ 2023年秋 日本物理学会 (発表者:船戸、洞口、中山、佐々木) @ 東北大★ 加藤科学振興会令和5年度研究奨励金・受賞式(M2中山颯人君)
★ 2023年 透磁会(OB会)
★ 2022年度卒業式&追いコン
★ レクリエーション(BBQ @ 多摩川)
★ 2021年度卒業式・修了式
★ 2019年度卒業式・修了式・追いコン
★ 2018年 透磁会(OB会)
★ 2017年 透磁会(OB会)
★ 2017年度卒業式・修了式・追いコン
★ 2012年の思い出
★ 2011年の思い出
★ 2010年(研究室立ち上げ年)の思い出