研究紹介動画

#1 研究紹介ビデオ(一般向け、5分程度)

#2研究紹介ビデオ(一般向け、10分程度)

能崎教授紹介パンフレット


リンクページ: 新版 窮理図解 no.10
新版 窮理図解

学生へのメッセージ

研究のどこが面白い?役に立つ?
 約100年前、「物質の磁気の正体(=電子の角運動量)」を探求したアインシュタインらによる根源的な問いから、磁気回転効果が発見されました。アインシュタインはあの有名な相対性理論を構築した理論物理学者ですが、実は磁気回転効果は一般相対性理論と密接に関係しており、効果の本質に一般相対性理論が深く関わっています。回転運動する物質中の電子は、一般相対性理論による時空の歪みの中を運動して磁気を生み出しています。しかし、最先端の高速回転装置が作り出せる回転周波数(〜1秒間に1万回転程度)では地磁気のゆらぎ程度のごく微弱な効果しか生み出すことができません。そのため、最近まで磁気回転効果の応用は難しいと考えられていました。
 能崎研究室では、固体表面を伝搬する音波を使って超高速な格子回転運動(〜1秒間に10億回転以上)を作り出し、様々な物質に磁気を生み出すことに世界に先駆けて成功しました。さらに、最新のナノテクノロジーを駆使して電気伝導度がナノメートル幅で変調したナノ傾斜材料を作製し、電子の高速な回転運動を人工的に実現、磁気の発生につなげる研究プロジェクトを進めています。このように、一般相対性理論に裏付けされた「力学的な角運動量」と「磁気的な角運動量」の相互変換に関する研究はまだ始まったばかりですが、従来の半導体デバイスの性能を凌駕する新しいデバイス開発につながるブレークスルー技術として注目されています。

能崎研究室への配属を希望する学生の皆さんへ
 能崎研究室は、力学と電気・磁気が融合した新しい分野である“スピンメカトロニクス”で世界をリードする研究成果を多数発表しています。一方で、「ミクロな世界でどのようなメカニズムで角運動量が受け渡されるのか?」、「どんな物質や構造で大きな効果を発現するのか?」など未解明問題が多数残っています。この研究分野では、古典物理学(電磁気学・力学)に加えて、量子力学や統計力学、物性物理学など君たちがこれまでに学んだ知識を網羅的・階層的にフル活用します。つまり、これまでの授業で概念的な理解にとどまっていた物理を実践できるのです。さらに、国内外で大きな国家プロジェクトが進行中であり、若手研究者が活躍できる環境が整っています。実際、大学院生だけでなく4年生が国際学会で発表することも能崎研究室では珍しくありませんこのような最先端の研究に挑戦し、将来世界で活躍できる研究者になりたいという野心溢れる学生を待っています!

研究テーマの一例
(1)力学的角運動量と磁気的角運動量の相互変換
(2)電気輸送特性を傾斜変調したナノ傾斜材料を用いたスピン流生成
(3)マイクロ波磁場を用いた次世代磁気記録技術
(4)希土類材料の磁気相転移(強磁性⇔反強磁性⇔常磁性)に伴うスピン物性の変調
(5)スピン流によるナノ磁性体の非線形磁化制御

キーワード
磁性物理学、スピンメカトロニクス、非平衡・非線形スピン物性、ナノテクノロジー

主な研究成果

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磁気回転効果は、物質の磁気の源が電子の回転運動であることを示す普遍的な物理現象であり、全く新しい磁気制御方法として期待されていました。効果の大きさは、最新の遠心分離器で回転させても地磁気よりも弱く、物質の磁気制御に使えませんでした。研究グループは、1秒間に10億回以上の速さで原子が局所的に回転する音波がニッケル鉄合金磁石に巨大な磁気回転効果(地磁気の10万倍以上)を発生することを世界で初めて発見しました。この発見は、音波を注入した磁石に現れる普遍的な効果であり、すべての最先端磁気デバイスに応用可能です。さらに、電流に比べて発熱の少ない音波を用いた磁気制御に大きく道を拓くものであり、磁気を用いた大容量記憶(スピン固体メモリ)や高速情報処理(スピン波論理演算回路)の大幅な省電力化が期待されます。

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磁石と半導体を組み合わせた複合材料において、音波の注入方向と磁気の向きにより、磁気の波「スピン波」の振幅を大きく変調できることを発見しました。従来の方法では、磁石をナノメートルスケールの厚さにすると順方向と逆方向に伝搬するスピン波の振幅が同等になり、スピン波の整流動作を実現することが困難でした。本研究グループは、膜厚が20ナノメートルの薄膜ニッケル磁石と400ナノメートルの半導体シリコンを組み合わせたニッケル/シリコン複合材料(複合材料)を作製し、逆方向のスピン波振幅を順方向の12分の1以下に低減できることを明らかにしました。本研究でスピン波の巨大な一方通行性が実証された新しい複合材料によって、スピン波の伝搬と干渉を論理演算に利用するスピン波デバイスの実現に不可欠なスピン波ダイオード開発が大きく前進することが期待されます。

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表面を酸化した銅において電流が磁気の流れ「スピン流」を生み出す現象が、電流の渦を起源とする証拠を発見しました。本研究で実証された新しいスピン流生成法によって、磁石や貴金属を必要としない省エネルギー磁気デバイスの実現が期待されます。今回、金属薄膜の表面酸化が電流渦を生成し、大きな直流スピン流を生み出すことを実験的に解明しました。一方、異種物質を原子層オーダーで積層する最先端の成膜技術を駆使することにより、酸化手法に比べて電気伝導率の傾斜構造をより精密に制御できます。これにより、表面酸化銅やプラチナを上回るスピン流生成効率が実現できると考えられます。また、従来のスピン流生成法とは異なり、磁石や貴金属を必要としないため、磁気デバイスの高性能化・省電力化だけでなく、安価なレアメタルフリー技術として大きく貢献できます。

音波を用いて銅から磁気の流れを生み出すことに成功 〜磁石や貴金属を必要としない磁気デバイス開発へ〜
Spin Current Generation Using a Surface Acoustic Wave Generated via Spin-Rotation Coupling
Daima Kobayashi, Tomohide Yoshikawa, Mamoru Matsuo, Ryo Iguchi, Sadamichi Maekawa, Eiji Saitoh, and Yukio Nozaki
Physical Review Letters 119 , 077202 (5 pages) (2017).

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表面を酸化した銅において電流が磁気の流れ「スピン流」を生み出す現象が、電流の渦を起源とする証拠を発見しました。本研究で実証された新しいスピン流生成法によって、磁石や貴金属を必要としない省エネルギー磁気デバイスの実現が期待されます。交流スピン流の生成に用いたSAWフィルター素子は、スマートフォンなどの携帯情報通信端末に広く搭載されています。本研究で実証された新しいスピン流生成法は、このSAWフィルター素子を用いてスピン流を生成し、携帯端末内で情報記録やデジタル情報処理を行う磁気デバイスの機能動作を省電力に制御できる可能性を提供します。また、従来のスピン流生成法とは異なり、磁石や貴金属を必要としないため、磁気デバイスの高性能化・省電力化だけでなく、安価なレアメタルフリー技術として大きく貢献できます。

卒業生の進路 (2010年以降)

企業
ソニー、日立製作所、富士通、TDK、古川電工、JFEスティール、リコー、ブリヂストン、国際航業、東芝電子管デバイス、NHK、アクセンチュア、キーエンス、サンディスク、京セラ、NEC、tdi、デジタルアーツコンサルティング、など

大学・研究期間
大阪大学(助教、現・福井大学准教授)、日本大学(博士研究員、現・助教)、慶應義塾大学(特任助教)、理化学研究所(博士研究員)、Helmholz-Zentrum Dresden-Rossendorf(独・博士研究員、現・原子力研究開発機構)

その他
独立行政法人製品評価技術基盤機構

主な研究設備

  • 次世代HDD評価用マイクロ波プローバ面内・垂直磁場切替マイクロ波プローバ面内2軸磁場マイクロ波プローバ(1)
    次世代HDD評価用2.5テスラ
    垂直磁石マイクロ波プローバ
    0.3テスラ面内2軸磁場
    1.3 テスラ垂直磁場切替
    マイクロ波プローバ
    0.2テスラ面内2軸磁場
    マイクロ波プローバ
    (20 GHz VNA-FMR測定)
  • 面内2軸磁場マイクロ波プローバ(2)面内2軸磁場マイクロ波プローバ(3)面内2軸磁場マイクロ波プローバ(4)
    0.3テスラ面内2軸磁場
    マイクロ波プローバ
    (SAW-スピン波変換実験)
    0.3テスラ面内2軸磁場
    マイクロ波プローバ
    (20 GHz ST-FMR測定)
    0.3テスラ面内2軸磁場
    マイクロ波プローバ
    (スピン起電力測定)
  • 電磁石回転型プローバθ, φ軸ステージ回転プローバ低温プローバ装置
    電磁石回転型プローバ
    (SAW-FMR測定)
    θ, φ軸ステージ回転プローバ
    (SOTスイッチング測定)
    8~300 K温度可変プローバ装置
    (マルチスピン物性評価)
  • 走査型プローブ顕微鏡マスクレス露光装置レーザー直接描画装置
    走査型プローブ顕微鏡
    (AFM, MFM mode)
    マスクレス露光装置レーザー直接描画装置
  • 4元超高真空電子ビーム蒸着器5元マグネトロンスパッタ9元超高真空マグネトロンスパッタ
    4元超高真空電子ビーム蒸着器5元マグネトロンスパッタ
    (リボルバー型)
    2インチ磁性3元、非磁性6元
    マグネトロンスパッタ

    (マルチカソード型)
  • ロボット搬送機構スパッタ面内2軸磁場セミオートプローバ走査型電子顕微鏡
    12インチ2元、4インチ4元
    ロボット搬送スパッタ

    (マルチカソード、逆スパッタ室)
    面内2軸磁場
    セミオートプローバ
    走査型電子顕微鏡
  • Arミリング装置磁場中アニール装置高周波プローブ付マイクロKerr効果測定
    Arイオンミリング装置
    (基板回転・傾斜機構付)
    磁場中アニール装置
    (最高温度1200℃)
    高周波プローブ付
    マイクロ磁気光学Kerr効果測定