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物理学科談話会
今後開催が予定されている、並びに、過去(2006年5月〜)に行われた物理学科談話会、物理学科特別講義の概要を掲載しています。
閉じ込められた流体界面の引きちぎれ:特異動力学と臨界現象のアナロジー
講師 | 奥村 剛 氏(お茶の水女子大学理学部物理学科) |
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日時 | ※台風接近のため、延期します。新しい実施日については後日、記載致します。 |
場所 | 矢上キャンパス22棟 物理学科会議室(22-108号室) |
概要 | |
動画 | Hana Nakazato, Yuki Yamagishi & Okumura, Phys. Rev. Fluids 2018(CC BY 4.0) |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
化学反応ネットワークの制御とトポロジー
講師 | 広野 雄士 氏(京都大学大学院理学研究科) |
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日時 | 2024年2月8日(木) 16:30-17:30 |
場所 | 矢上キャンパス14棟216号室 |
概要 | 我々の細胞内では、数千もの化学反応が連鎖して複雑なネットワークを成しており、我々の生理機能を担っています。細胞が生きるためには、このような複雑なシステムを安定的に運用しなければなりませんが、そのために様々な制御機構が実装されています。特に、様々な外部擾乱が存在する中でも、目的変数を所定の値に追従・維持するロバスト制御は、細胞内の恒常性を維持する上で重要な役割を果たしています。本講演では、化学反応ネットワークにおけるロバスト制御の仕組みに焦点を当て、その中でネットワークのトポロジーがいかに本質的な役割をしているかを議論したいと思います。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
トポロジカル・フォトニクスとトポロジカル・メカニクス
講師 | 小澤 知己 氏(東北大学 材料科学高等研究所) |
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日時 | 2024年1月11日(木) 13:30-15:00 |
場所 | 矢上キャンパス12棟205号室 |
概要 | トポロジカル物性の研究は1980年の半導体界面における整数量子ホール効果の発見に端を発する。量子ホール効果に類した現象は長らく量子多体系特有の現象だと思われてきたが、2008年にHaldaneとRaghuが古典的なMaxwell方程式に従う電磁波にも量子ホール効果に類似する現象が存在することを示した。以来、トポロジカル物性は古典物理学に従う系においても積極的に研究が行われることになってきた。特にフォトニクスにおいてトポロジカル物性を調べる分野をトポロジカル・フォトニクス、古典力学(ニュートン力学)における同様の分野をトポロジカル・メカニクスと呼ぶ。トポロジカル・フォトニクスではトポロジカル・レーザーなどのフォトニクス特有の現象が見つかり、トポロジカル・メカニクスでは地球上の海流や大気流の赤道付近の流れが量子ホール効果における端カレントに対応することが判明するなど、それぞれ独自の発展を遂げている。本コロキウムでは古典系のトポロジカル物性を基礎的なところから最先端の話題まで概説する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
非平衡系における幾何学的位相と幾何学的エンジン
講師 | 吉井 涼輔 氏(山口東京理科大学 講師) |
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日時 | 2023年11月9日(木) 13:00-14:00 |
場所 | 矢上キャンパス14棟212号室(ディスカッションルーム2) |
概要 | パラメータ駆動下における輸送現象に関して、パラメータ空間における幾何学的位相が輸送現象に影響を与えることが知られている。これに関連して、熱浴や系のパラメータを時間的に変調している状況では非平衡定常状態とは異なった状態(幾何学的状態)に落ち着くことを発見した。パラメータの変調を行うと、非平衡定常状態からこの幾何学的状態への緩和が生じるため、時間発展において仕事を取り出すことが出来る場合がある。本講演では一般的な枠組みの説明と不純物アンダーソンモデルを例とした具体的な計算結果を紹介する。 参考文献 R. Yoshii and H. Hayakawa, “Demon driven by geometric phase”, Phys. Rev. Research 5, 033014 (2023). |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
SuperKEKB加速器とBelle II実験で挑む未踏のビーム衝突性能と未知の素粒子物理
講師 | 松岡 広大 氏(高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所)、王 旭東 氏(高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設) |
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日時 | 2023年10月6日(金) 10:00-12:00 |
場所 | 矢上キャンパス12棟205号室 |
概要 | 誕生直後の超高温の宇宙では、物質や反物質を構成する最小単位である素粒子や反素粒子がばらばらの状態で飛び交っていた。そこから「どのようにして反物質が消え、物質だけで構成される今の宇宙になったのか?」といった宇宙の根源的な謎に迫るためには、超高温(=高エネルギー)の素粒子が従う物理を解き明かさなければならない。SuperKEKB加速器は、電子ビームと陽電子ビームを衝突させて別の素粒子や複合粒子を大量に生成する最先端の加速器で、Belle II実験は、それら粒子の崩壊の様子を精密に測定することで、量子効果により崩壊中に現れる高エネルギーでの素粒子物理を探求する実験である。本講演では、すでに達成している世界最高のビーム衝突性能を今後さらに10倍以上に押し上げようというSuperKEKB加速器の挑戦と、素粒子を通して宇宙の謎に迫ろうとするBelle II実験の挑戦を紹介する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Towards hybrid and topological qubits based on semiconductor-superconductor core-shell nanowire Josephson junctions
講師 | Patrick Zellekens 氏(理研、石橋グループPD) |
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日時 | 2023年4月20日(木) 13:20-14:20 |
場所 | 物理学科会議室(22-108号室) |
概要 | |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Snowball critical velocity to nucleate quantized vortex: Macroscopic quantum tunneling
講師 | 河野 公俊 氏 (台湾陽明交通大学教授) |
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日時 | 2023年1月26日(木) 16:30-18:00 |
場所 | 物理学科会議室(22-108号室) |
概要 | The critical velocity for vortex nucleation of snowball (positive ion) is determined experimentally in isotopically enriched 4He at temperatures down to 50 mK. Systematic I-V characteristic measurements for the two-dimensional snowball pool are carried out with an extremely fine control of driving electric fields. The critical velocity of ∼ 32 ms−1 at 500 mK decreases with lowering temperature and approaches a temperature independent value of ∼ 18 ms−1 below 200 mK. The decrease of critical velocity corresponds to the increase of the nucleation rate. In this talk, making reference to the “superohmic” macroscopic quantum tunnelling case of the Caldeira and Leggett theory, the temperature dependence will be discussed. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
ヘリウム表面上2次元電子とイオン
講師 | 河野 公俊 氏 (台湾国立交通大学教授) |
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日時 | 2020年1月30日(木) 16:30-18:00 |
場所 | 物理学科会議室(22-108号室) |
概要 | 液体ヘリウム自由表面に外側から近づく電子は、ヘリウム原子の静電分極に よる引力を受ける一方、ヘリウム原子に束縛される電子の波動関数が存在する 領域まで近づくとパウリ原理による斥力を受ける。そのため、表面近傍では外 来電子に対してポテンシャル井戸が形成されて、電子は束縛される。その結果、 表面と垂直方向の運動は量子化されて離散的なエネルギー準位が形成されると 同時に、表面と平行な方向には自由に運動できる、2次元電子系が形成される。 他方、液体内部から自由表面に近づく電子や正イオンには、ヘリウム原子の 静電分極に由来する力は斥力となり、表面からの距離に反比例して発散するポ テンシャルが形成される。これに一様な電場を荷電粒子を表面に押し付ける向 きに印加することにより、ポテンシャル井戸を作って、束縛状態を作ることが できる。 このようにして、ヘリウム表面に形成される2次元電子系およびイオン系は それ自体ユニークな物性を示すとともに、超流動ヘリウムのプローブとして表 面現象の検出に利用することができる。ヘリウム表面上2次元電子の発見より 50年となるこの期に、そのユニークな物性研究について紹介する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Uncertainty relations and fluctuation theorems for Bayes nets
講師 | Prof. David Wolpert (Santa fe institute) |
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日時 | 2019年12月10日(火) 13:30-15:00 |
場所 | 14棟212室(ディスカッションルーム2) |
概要 | The pioneering papers analyzed the non-equilibrium statistical physics of a set of multiple interacting systems, S, whose joint discrete-time evolution is specified by a Bayesian network [Sagawa and Ito, 2013]. The major result of Ito and Sagawa was an integral fluctuation theorem (IFT) governing the sum of two quantities: the entropy production (EP) of an arbitrary single one of the systems, v in the set S, and the transfer entropy from v to the other systems. I derive several detailed fluctuation theorems (DFTs), concerning arbitrary subsets of all the systems (including the full set). I also derive several associated IFTs, concerning an arbitrary subset of the systems, thereby extending the IFT. In addition I derive "conditional'' DFTs and IFTs, involving conditional probability distributions rather than (as in conventional fluctuation theorems) unconditioned distributions. I then derive thermodynamic uncertainty relations relating the total EP of the Bayes net to the set of all the precisions of probability currents within the individual systems. I end with an example of that uncertainty relation. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
液体ヘリウム3におけるスピン流生成
講師 | 堤 康雅 氏 (理化学研究所創発物性科学研究センター) |
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日時 | 2019年9月20日(金) 16:30-18:00 |
場所 | 14棟213室(ディスカッションルーム3) |
概要 | スピンが力学回転と結合することはEinstein-de Haas効果やBarnett効果として古くから知られていたが、最近になってスピンと力学回転の結合が様々な物質中でのスピン流生成に利用できることが明らかになってきた。理論的には、力学回転で作られる渦度はZeeman効果を与える有効磁場とみなすことができるので、渦度に勾配があればStern-Gerlach効果によりスピンが流れる[1]。実際に、銅の薄膜に表面弾性波を立てることで作られる渦度勾配でスピン流が生成されることが観測されている[2]。また、細管中に水銀等の液体金属を流した際の流速分布による渦度勾配で発生するスピン流も観測されている[3]。本セミナーでは、平板間のチャンネルに閉じ込めた液体ヘリウム3の両端に圧力差をつけて流れを作ることでも、渦度による有効磁場勾配が発生し、ヘリウム3核スピンのスピン流が生成されることを紹介する。液体ヘリウム3の物性はこれまでの研究からよく理解されており、有効磁場勾配の大きさは定量的に見積もることができる。100mKにおいてチャンネルに1 Pa/cmの圧力勾配をつけたときに発生する有効磁場勾配の大きさは、スピンエコーの実験で用いられる磁場勾配と同程度の大きさとなるので、実験でも有効磁場勾配を観測できると期待される。有効磁場勾配により生成されるスピン流は、チャンネルを構成する平板に向かって流れるため、白金などのスピン軌道相互作用が強い金属でできたチャンネルを用意することで、平板に流れ込むスピン流を逆スピンホール効果により電流として取り出せると期待できる。有効磁場勾配の大きさから見積もられる電流の大きさについても議論したい。 [1] 松尾衛, 齊藤英治, 前川禎通, 日本物理学会誌, 72, 641 (2017). [2] D. Kobayashi et al., Phys. Rev. Lett. 119, 077202 (2017). [3] R. Takahashi et al., Nature Phys. 12, 52 (2016). |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
アルマの概要とその将来計画
講師 | 浅山信一郎 氏(国立天文台チリ観測所長) |
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日時 | 2019年7月10日(水) 16:30-18:00 |
場所 | 物理学科会議室(22-108号室) |
概要 | アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: ALMA)は、 日本を含む東アジア、北米、欧州による国際協力により南米チリ共和国のアタカマ高地(標高約5,000m) に建設された電波干渉計である。合計66台の高精度パラボラアンテナを設置し、それらを結合して連動させることで1つの巨大な電波望遠鏡として動作させている。最大基線長を16kmまで広げ、観測波長をサブミリ波まで短くすることにより、ハッブル宇宙望遠鏡の約10倍高い解像度を実現している。 さらに従来の電波望遠鏡を一桁以上上回る高感度を達成しており、宇宙物理学、天文学、惑星科学などにおいて、今まで解明されていなかった重要な科学問題を次々と明らかにしつつある。アルマでは、次の10年の科学目標と開発項目を示すアルマ望遠鏡将来開発ロードマップが策定され、これを実現すべく各地域で新規装置の開発が進められている。 本講演ではアルマのシステムの概要および主要装置と用いられている技術について解説を行い、現在進められている将来開発についても紹介を行う。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
ポラリトンによる光波混合とそれを使ったFloquetレーザー
講師 | 杉浦 祥(ハーバード大) |
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日時 | 2019年3月20日(水)13:00 - 14:30 |
場所 | 物理学科会議室(22-108号室) |
概要 | フォノンと光が物質内で束縛状態を形成している時、それはフォノンポラリト ンと呼ばれる。 フォノンポラリトンを形成する事で、物質内に光を閉じ込めることができ、伝 播速度も遅くすることができるなど、 フォノンポラリトンはテラヘルツ周波数の光学において重要である。 本講演では、まず、ポンプ光により強くフォノンポラリトンを励起した状況下 における、 ポンプ&プローブ実験の解析のための理論的枠組みを提示する。物質内のプロー ブ光の伝搬は、ポラリトンによる振動により、 FloquetバージョンのMaxwell方程式により記述され、非線形性によりポラリト ンとプローブ光の光波混合が引き起こされる。 その結果、ある周波数帯ではプローブ光が増幅される事が示され、これは Cartellaらの最近の実験[1]と整合する。 本講演ではさらに、この系において共鳴的なポラリトンの散乱によるレーザー 現象が生じていることを示す。 この時、プローブ光は時間とともに指数関数的に増幅され、ポラリトンは効率 的に光へと変換される。 このレーザー現象は現在の実験技術において容易に到達可能な範囲にあり、例 えばSiCにおいて実現可能であると考えられる。 [1] A. Cartella, T. F. Nova, M. Fechner, R. Merlin, andA. Cavalleri, PNAS 115, 12148 (2018) |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
光コムを用いた波長10μm帯中赤外分子分光
講師 | 岩國 加奈 氏(電気通信大学) |
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日時 | 2019年3月1日(金)16:30 - 18:00 |
場所 | 物理学科会議室(22-108号室) |
概要 | 光コムは超短パルスレーザーの出力として得られ、周波数軸上ではコムモードが等間隔に並ぶため 「周波数のものさし」として、計測分野に革命を起こしました。近年では、その恩恵は分子分光分野にも広がり、 分子遷移の絶対周波数計測が非常に高い精度で測定できるようになりました。 中でも、光コムを分光装置の光源として使う手法は、短時間で広帯域スペクトルが高分解能で取得できることから、 基礎物理だけでなく産業応用に向けても盛んに研究されています。特に、波長が5μmより長い中赤外領域は、 質量の大きな分子の精密分光を行える波長域であり、光コムを用いた分光実験が熱望されています。 本講演では、JILAで行った波長10μm帯における光コム光源とそれを用いた新 奇分光計の開発について紹介します。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
局所フェルミ流体によって誘起されるベル相関
講師 | 阪野 塁 氏(東京大学物性研究所) |
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日時 | 2018年12月3日(月)13:15 - 14:45 |
場所 | 物理学科会議室(22-108号室) |
概要 | 量子ドットに局在モーメントが発生すると、繋がれたリード電極中の伝導電子に よって局在モーメントが遮蔽される。この現象は、典型的な電子の多体効果で あり近藤効果と呼ばれ、長く固体物理の中心的話題として研究されてきた。 この近藤効果の低エネルギー状態は、局所フェルミ流体と呼ばれる、ランダウの フェルミ流体を量子不純物系へ拡張した理論によって説明できる。つまり、 基底状態や低エネルギー励起は、準粒子状態と残留相互作用による散乱に よって説明できる。近藤効果が起こった量子ドットの非線形電流中では残留 相互作用によって励起された準粒子の対が誘起され、倍電荷を持った状態と してショットノイズを増幅することが最近の実験で確認された[1]。 本講演では、残留相互作用に形成された準粒子対の量子エンタングルメント 特性を明らかにする[2,3]。具体的には、2重量子ドット間に働く残留交換相互用に よって誘起されるチャンネル間のスピンエンタングルメントを、スピン電流に 対するベル相関を用いて解析する。この結果、残留相互作用によって誘起された スピン相関は、ベルの不等式を破る量子力学らしさを持った相関であることが わかった。さらに、残留相互作用に依存したベル不等式を導入することで、 全電流のスピン相関と電荷相関の観測により、このモデルのベル相関が実験 検証可能になることを示す。 [1] M. Ferrier et al., Nat. Phys. 12, 230 (2016). [2] RS, A. Oguri, Y. Nishikawa, and E. Abe, Phys. Rev. B 97, 045127 (2018). [3] RS, A. Oguri, Y. Nishikawa, and E. Abe, arXiv:1810.13032. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
量子エレクトロニクス70年
講師 | 霜田 光一 氏(日本学士院) |
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日時 | 2018年10月31日(水) 14:45 - 16:15 |
場所 | 14棟204号室 |
概要 | レーダーのマイクロ波技術を応用して始まった量子エレクトロニクスの研究で、メーザー・レーザーが発明された。 そしてレーザーは科学技術の全分野を革新している。たとえば、光ファイバーによるレーザー通信は、今では毎秒ペタビット どころかエクザビットまで高速高性能化して、高度情報化社会を支えている。量子エレクトロニクスの学術的応用の成果は ノーベル賞受賞研究20件以上、受賞者30名以上をもたらしている。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
H3+ の赤外線スペクトルによる天体宇宙線束の測定
講師 | 岡 武史 氏(天体物理教室、化学教室、エンリコ・フェルミ研究所、シカゴ大学) |
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日時 | 2018年10月3日(水) 16:30 - 18:00 |
場所 | 12棟206号室 |
概要 | 宇宙線は極度に高いエネルギーを持つ、神秘的な現象ですが、その存在は銀河系を通じて普遍的であり、 その効果は天文学の広い分野にわたって深い影響を及ぼします。 従ってその強度を正確に測定することは天文学の進歩に重要なことです。 宇宙線束の直接測定は太陽系近傍に限られますから、 星間空間での測定は宇宙線により生成する分子のスペクトルを使います。 宇宙線のエネルギー密度が太陽系近傍で1eV cm—3程度であることは理論的に予言され[1] その後の測定はこの値が銀河系を通じて均一であることを示唆しました。 その後30年にわたりこの値は信じられ、宇宙線が減衰することなく銀河系を透過する証拠として用いられました。 この事情は1996年に星間H3+が発見される[2]と一変しました。H3+ は、その化学過程が基礎的で簡潔であること、 星間空間に普遍的に存在すること、スペクトルが統一的に観測されること、 から宇宙線測定に又とない陽イオン分子です。 星間H3+の発見後間もなく、宇宙線のエネルギー密度が濃い雲では1eV cm—3程度であるが、 薄い雲ではそれより一桁高いことが確証され、宇宙線が銀河系を通じて均一であるという神話は崩れ去りました[3]。 H3+ を実験室で分光学的に発見して[4]から星間H3+の検出には16年かかりましたが、 現在までにH3+は銀河系内外のあらゆる天体で見つかりました。その中で最も驚かされたのは銀河中心に濃縮されたH3+です。 これは銀河中心の宇宙線のエネルギー密度がはるかに高いためです。最初は太陽系近傍より二桁高い値を出したのですが[5]、 その後の観測と解析の結果、三桁高いことが結論されました[6]。これらの結果が天文学に及ぼす影響について議論します。 [1] L. Spitzer, Jr. & M. G. Tomasko, ApJ 152, 971 (1968) [2] T. R. Geballe & T. Oka, Nature 384, 334 (1996) [3] B. J. McCall, B. J. Honeycutt, R. J. Saykally, et al. Nature, 422, 500 (2003) [4] T. Oka, PRL 45, 531 (1980) [5] T. Oka, T. R. Geballe, M. Goto, T. Usuda, & B. J. McCall, ApJ 632, 882 (2005) [6] T. Oka, T. R. Geballe, M. Goto, T. Usuda, B. J. McCall, & N. Indriolo, ApJ (2018) to be submitted |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
励起子ポラリトンのボース・アインシュタイン凝縮から半導体レーザーへの非エルミート相転移
講師 | 花井 亮 氏(大阪大学理学部) |
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日時 | 2018年10月1日(月) 15:00 - 16:30 |
場所 | 物理学科会議室(22-108号室) |
概要 | 本講演では、ポラリトン凝縮体を念頭に、非エルミート性により誘起される新しいタイプの非平衡相転移現象を提案する[1]。半導体量子井戸に微小共振器を挟んだ構造を光励起すると、光子と電子正孔対(励起子)でできた準粒子である励起子ポラリトン気体が生成し、それが熱化することでボース・アインシュタイン凝縮(BEC)が実現する。一方、光照射強度をさらに強くすると、この系は通常の半導体レーザーデバイスとして作動する。興味深いことに、BECとレーザーのどちらも共通して自発的にU(1)対称性が破れた相であるにもかかわらず、その間に相境界があることが多くの実験グループにより観測されている(「第二閾値」)。本講演では、このような相転移が非エルミート性によりもたらされ得ることを理論的に示す。まず、流入・流出のある電子正孔光子気体に対する運動方程式を定式化し、その定常解が2つのタイプに必ず分類できることを示す。次に、これら2つのタイプが合体する例外点が、気液相図における臨界点と同様、一次相転移線の終端点になることを示す。以上の結果をもとに、ポラリトン系の相図を提案する。この研究結果は、これまでの理解に反し、「第二閾値」の観測が強結合-弱結合転移とは必ずしも言えないことを強く示唆している。 [1] R. Hanai, A. Edelman, Y. Ohashi, and P.B. Littlewood, arXiv:1809.01273. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Terahertz time-domain spectral scanner for future in-human burn diagnosis
講師 | M. Hassan Arbab氏(ニューヨーク州立大学 ストーニーブルック校) |
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日時 | 2018年9月7日(金) 17:00 - 18:30 |
場所 | 14棟613号室 (ディスカッションスペース63) |
概要 | Terahertz biophotonics have enjoyed significant attention over the past decade as evidenced by wave of new publications in this field. Much of the recent research activity has been focused on understanding the physical mechanisms responsible for terahertz signal contrast of different biological and diseased tissue, such as cancerous tumors. In vivo application of terahertz imaging, however, has been limited to few demonstrations mostly due to a need for development of novel, robust and portable terahertz scanners that can be utilized in clinical settings. In this seminar, I will first focus on understanding the electromagnetic physical phenomenon that describe the terahertz spectral dependence of normal and burned skin as a stratified, heterogeneous, highly-scattering and lossy medium. Next, I will describe the design and characterization of several f-theta scanning configurations designed and built for future in-human studies for diagnosis of burn and other skin diseases. Finally, we will discuss future research directions to improve the accuracy of the terahertz diagnosis modality by exploiting polarization-sensitive signatures of biological tissue. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Integrated Quantum Photonics: Exploiting quantum and photonic confinements at the nano-scale
講師 | Eli Kapon 氏(スイス連邦工科大学 ローザンヌ校) |
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日時 | 2018年6月11日(月) 10:45 - 12:15 |
場所 | 12棟202A号室 |
概要 | Preparation and processing of single photons and other quantum states of light is a prerequisite for an important class of quantum science and technology platforms. Integration of sources of quantum light with various photonic elements would allow the realization of compact, inexpensive and efficient photonic chips for generating, processing and detecting single photons and their combinations. Such systems can be realized by integrating semiconductor quantum dots (QDs) with photonic crystal (PhC) cavities and waveguides. Moreover, many features of light-matter interaction can be tailored in such structures due to quantum and photonic confinements at the 10-100nm scale. We discuss in some detail the realization and investigation of such systems using organometallic vapor phase epitaxy of site-controlled QDs and their integration with “tailored-potential” PhC structures. References: A. Surrente et al., Nano Research 9 (11), 3279-3290 (2016). M. Calic et al., Scientific Reports 7, 4100 (2017). |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
薄膜界面のスピン軌道物性の観測と操作
講師 | 岡林 潤 氏(東京大学大学院理学系研究科) |
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日時 | 2018年5月23日(水) 16:30 - 18:00 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | 磁性体と非磁性体の界面は、相乗効果により新規物性が出現する舞台となる。 一般に、磁性薄膜では面内方向が磁化容易軸となるが、界面の効果により面垂直方向が安定化する場合もある。 これらは、スピン軌道相互作用に由来する現象であるが、 スピンについては磁気伝導特性から調べられるが、軌道の役割については明確でないところが多い。 スピントロニクス素子に応用される原子レベルで精密に制御した薄膜界面において、 元素別にスピン角運動量と軌道角運動量を計測する必要があり、放射光を用いた磁気分光が重要な役割を果たす。 本講演では、界面での軌道角運動量に着目した物性(スピンオービトロニクス)について紹介する。 特に、非磁性体に誘起される軌道磁性、誘電体と磁性体の界面における軌道角 運動量の操作について述べる予定である。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
光を利用した温度の計測と標準
講師 | 石井順太郎氏(産業技術総合研究所) |
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日時 | 2017年10月11日(水) 16:30 - 18:00 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | 黒体ふく射を原理とした放射温度計は、高温域を中心とした温度の一次標準と して高精度化が進められているとともに、実用的な非接触温度計測技術として、 産業計測への応用研究も拡大している。ここでは、放射温度計測を中心として、 光を利用した最近の温度計測や標準技術の研究事例について紹介させて頂きます。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Landau-Zener-Stuckelberg-Majorana Interferometry: Quantum Bits Versus Classical Systems
講師 | Dr. Stefan Ludwig (Paul-Drude-Institut fur Festkorperelektronik, Berlin) |
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日時 | 2017年9月7日(木) 13:30 - 14:30 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | 2準位系において準位間隔Δを変化させると、縮退点(Δ=0)の近傍で avoided crossingが生じます。そのときの1つの準位から他方への遷移 確率はLandau-Zenerの公式で与えられ、波動関数にはStuckelberg phaseが 現れます。Δ=0を中心にΔを周期的に振動させると、その位相の蓄積に よって干渉効果が生じますが、それが表題のLandau-Zener-Stuckelberg- Majorana Interferometry(または Landau-Zener-Stuckelberg Interferometry) で、最近、量子情報処理の研究から注目されています。今回の談話会は、 2重量子ドットを用いた実験についてです。 [1] F. Forster et al., PRL 112, 116803 (2014) [2] Landau-Zener-Stuckelberg InterferometryについてのReview S.N. Shevchenkoa, S. Ashhabb, F. Nori, Phys. Reports 492, 1 (2010) |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
アミロイド線維の分子動力学シミュレーション
講師 | 奥村 久士 氏(分子科学研究所 計算科学研究センター) |
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日時 | 2017年6月14日(水) 16:30 - 18:00 |
場所 | 14棟212 (DS2) |
概要 | アミロイド線維はタンパク質やペプチドが間違って折りたたんで凝集した不溶性の線維状物質である。アミロイド線維は40種類以上の病気の原因と考えられている。例えばアルツハイマー病はアミロイドβペプチド(Aβ)が凝集してできたアミロイド線維が原因と言われている。我々のグループではアミロイド線維の生成過程および破壊過程を分子レベルで解明するべく分子動力学法による理論研究を進めている。アミロイド線維の形成過程を明らかにするためには様々な構造を効率よくサンプルする必要がある。これまでこのような問題を解決するためにレプリカ交換法などの手法が用いられてきたが、我々は最近、それよりも効率の良いレプリカ置換法を提案した[1]。この手法では2つのレプリカ間だけで温度を交換するのではなく、3つ以上のレプリカ間で温度を置換する。さらに従来用いられてきたメトロポリス・モンテカルロ法ではなく諏訪・藤堂法を用いる。この手法をアミロイド線維形成過程に適用した結果を紹介する[2]。また、これまでの実験からAβのアミロイド線維は一方向にしか伸長しないことが知られているが、その理由はまだ分かっていない。そこで両末端に何かしら構造の違いがあるのではないかと予想し、分子動力学シミュレーションを行った。その結果、アミロイド線維の一方の端では2本のβシートが閉じたり開いたりして揺らいでいるのに対し、もう一方では揺らぎが少なく閉じたままになっていることを発見した[3]。さらにアミロイド線維を破壊する過程を明らかにするために、水中のアミロイド線維に超音波をかけた非平衡分子動力学シミュレーションを行った。その結果、キャビテーション(気泡生成)により破壊されるメカニズムを明らかにすることができた[4]。 [1] S. G. Itoh and H. Okumura: J. Chem. Theory Comput. 9 (2013) 570-581. [2] S. G. Itoh and H. Okumura: J. Phys. Chem. B 120 (2016) 6555-6561. [3] H. Okumura and S. G. Itoh: Sci. Rep. 6 (2016) 38422 (9 pages). [4] H. Okumura and S. G. Itoh: J. Am. Chem. Soc. 136 (2014) 10549-10552. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Universal Coherence-Induced Power Losses of Quantum Heat Engines in Linear Response
講師 | Kay Brandner 氏 (Aalto University, Finland) |
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日時 | 2017年5月12日(金) 16:00 - 17:30 |
場所 | 14棟212 (DS2) |
概要 | As the miniaturization of thermal machines is currently advancing towards ever-smaller scales, the question arises how genuine quantum effects will affect their performance. Here, we introduce a universal scheme to divide the power output of a periodically driven quantum device into a classical contribution and one stemming solely from coherence. Specializing to Lindblad-dynamics and small driving amplitudes, we derive upper bounds on both, the coherent and the total power of cyclic heat engines. These constraints can be expressed in terms of protocol-independent parameters resembling conventional Green-Kubo coefficients. They imply that, for sufficiently slow driving, coherence inevitably leads to power losses in the linear-response regime. Our general analysis, which we illustrate using the experimentally relevant example of a single-qubit engine, opens a new avenue towards systematic investigations of the role of quantum coherence for thermal power generation. References: KB, U. Seifert, Phys. Rev. E 93, 062134 (2016). KB, M. Bauer, U. Seifert, arXiv: 1703.02464 (2017). |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
多面体タイリングの表現法〜不規則な原子の並び方を解析するために〜
講師 | 西尾憲吾 氏(産業技術総合研究所) |
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日時 | 2016年12月21日(水) 16:30〜18:00 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | ガラスや液体などを構成する原子の並び方を解析する手法の一つにボロノイ多 面体解析があります。この手法では、原子をボロノイ多面体に置き換えて、ボロ ノイ多面体が空間を埋め尽くすモデルとして原子配列を表現します。ボロノイ多 面体の形を調べることによって、短距離秩序を研究できます。ボロノイ多面体の 配列パターンを調べることができれば、長距離秩序を研究することができます。 ボロノイ多面体の形を調べる手法としてボロノイ指標がよく知られていますが、 異なる多面体が同じ指標をとりえるという問題があります。一方、不規則に並ん だボロノイ多面体の配列パターンを調べる手法は、講演者が知る限り、これまで ありませんでした。そこで、上述の問題点をすべて克服するための手法として多 胞体コードを創出しましたので、その理論を説明します[1,2]。 最初に、多角形から多面体を復元するための設計図となるような数列を、任意 の多面体から生成する方法を説明します。この数列を多面体コードワードとよび ます。多面体コードワードは多面体の設計図であると同時に、多面体の名前とみ なすこともできます。次に、多面体の配列パターンを多面体コードワードの列と して表現する方法を説明します。 多面体や多面体による空間充填は、原子配列のみならず、泡や細胞、銀河の分 布、情報ネットワークなど、様々な系に見られる構造です。多胞体コードはそれ らの構造を解析するためにも応用できると考えられます。 [1] Nishio, K. and Miyazaki, T. How to describe disordered structures. Sci. Rep. 6, 23455; doi: 10.1038/srep23455 (2016). [2] https://youtu.be/Z6qdZnJ8R-I (You Tubeで「多面体コードワード」を検索) |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
量子状態族の相互変換とf-divergence
講師 | 松本啓史 氏(国立情報学研究所) |
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日時 | 2016年12月16日(金) 16:30〜18:00 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | 数理統計学では実に様々な統計的な推測の問題を扱う。それらは、最終的には 各個に解かれなければならない問題であるものの、確率分布族の相互変換を考 察することで、問題の見通しをよくすることが出来ることが知られている。例 えば、一次漸近理論においては、扱いやすい分布族(ガウス分布族)との相互 変換を考えることで問題を簡単化できるし、また特定の利得関数に依存ぜずに 「より情報が多い」確率分布族を定義することが出来る。また、二つの確率分 布からなる確率分布族の変換可能性はf-divergenceとよばれる、相対エントロ ピーやレニー相対エントロピーを含む一連の量で特徴づけられる。本講演では、 古典の上記理論のレビューののち、その量子版の理論を展開する。特に、二つ の量子状態からなる量子状態族の場合、漸近的な標準形の存在を示すことがで き、そこからある一連の性質を満たす量子版の相対エントロピーはvon Neumann型に限られることを示す。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
1/f noise and the low frequecy cutoff paradox
講師 | Eli Barkai 氏 (Professor, Dept. Physics, Bar Ilan University, Israel) |
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日時 | 2016年9月23日(金)15:30〜16:30 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | Starting with the work of Bernamont (1937) on resistance fluctuations, noisy signals of a vast number of natural processes exhibit 1/f power-spectrum. Such spectra are found in weather data, brain activity, currents of ion-channels and certain chaotic systems to name a few. The wide applicability of this spectrum resulted in conflicting theories distributed among many disciplines. A unifying feature is that 1/f power spectrum is non-integrable at low frequencies implying that the total energy in the system is infinite. As pointed out by Mandelbrot (1950's) this infrared catastrophe suggests that one should abandon the stationary mind set and hence go beyond the widely applicable Wiener-Khinchin formula for the power spectrum. Recent theoretical and experimental advances renewed the discussion on this old paradox, for example in the context of blinking quantum dots [1,2]. Importantly the removal of ensemble averaging in nano-scale measurement revealed time dependent spectrum, at least for nano-crystals. In this talk ageing, intermittency, weak ergodicity breaking, and critical exponents of the sample power spectrum are discussed within a theoretical framework which hopefully provides new insights on the 1/f enigma [1,3]. A general theoretical framework based on non stationary but scale invariant correlation functions leads to an ageing Wiener-Khinchin theorem which replaces the standard spectral theory [3]. The non-integrable spectral density is reminiscent of the infinite invariant measure of the Pomeau Manneville intermittent map. [1] M. Niemann, H. Kantz, E. Barkai, Phys. Rev. Lett. 110,140603 (2013). [2] S. Sadegh, E. Barkai, and D. Krapf, New. J. Phys., 16 113054 (2014). [3] N. Leibovich and E. Barkai, Phys. Rev. Lett., 115, 080602 (2015). |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
An introduction to the National Institute for Theoretical Physics (NITheP), and a brief overview of quantum mechanics on noncommutative spaces
講師 | F. G. Scholtz 氏 (Professor, Stellenbosch University, South Africa) |
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日時 | 2016年8月5日(金)13:00〜14:30 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | I shall first give a short general talk to introduce my Institute with the title: An Introduction to the National Institute for Theoretical Physics (NITheP) A brief introduction to the National Institute for Theoretical Physics in South Africa and the opportunities it offers for researchers in theoretical physics will be given. I shall follow this with a research talk with the title: A Brief Overview of Quantum Mechanics on Noncommutative Spaces A brief overview of recent developments in the formulation of quantum mechanics on noncommutative spaces is given. Several examples are discussed and the physical consequences of noncommutative space are highlighted. The latter is particularly profound for Fermi gases at high densities and the potential observable consequences for dense astrophysical objects are pointed out. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Structure and dynamics of biological macromolecules at cellular scales
講師 | Michael Feig 氏 (Professor, Michigan State University) |
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日時 | 2016年6月17日(金)16:30〜18:00 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | The structure and dynamics of proteins and nucleic acids is well-understood at a single molecule level and under dilute or crystallographic conditions. However, much uncertainty remains about the effect of cellular environments on biological macromolecules. Early work has emphasized the volume exclusion effect due to crowding in the cellular milieu that is generally expected to favor compact, native configurations but more recent experimental and computational studies suggest that destabilization of native structures is also possible due to attractive interactions with surrounding proteins and altered solvation effects. Results from atomistic computer simulations of a number of different systems are presented to examine the detailed contributions of cellular environments on biomolecular structure and dynamics. Protein destabilization is discussed for villin in dense protein G/villin mixtures, the effect of crowded environments on DNA structure is described, and recent results from large-scale cytoplasmic simulations are presented that provide the most comprehensive view to date of physical interactions between biological macromolecules in realistic cellular environments. (細胞環境下での生体高分子の全原子分子シミュレーションを行っている Michael Feig氏に研究内容に関して、セミナーをしていただきます。) |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
超新星の爆発メカニズムとマルチメッセンジャー
講師 | 固武 慶 氏 (福岡大学理学部 准教授) |
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日時 | 2016年5月25日(水)16:30〜18:00 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | (重力崩壊型)超新星の爆発メカニズムは50年以上に渡る精力的な 研究にも未だ完全には理解されていない。爆発メカニズムの 解明には、 ニュートリノ反応をはじめとする微視的素過程に 加え、星が爆発していく巨視的な流体現象としての振る舞いも 同時に明らかにする必要がある。このようにマルチスケール・ マルチフィジックスを含むシステムの非線形な動的進化を 理解するためには、数値シミュレーションの実行が不可欠である。 特に超新星シミュレーションには、自然界の4つの力をすべて 取り込んだ数値コードの開発が不可欠であることから、 数値天文学の中でも最も挑戦的な課題の一つとされてきた。 本講演では、最新の数値計算結果をレビューしながら、爆発時に 放射される重力波やニュートリノの特徴についても詳しく触れ、 今後発展が期待される「マルチメッセンジャー天文学」の 視点から如何に爆発メカニズムに関する謎に迫ることができるか 議論したい。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Fano resonance through Higgs bound states in tunneling Nambu-Goldstone modes
講師 | 土屋 俊二 氏 (東北工業大学 准教授) |
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日時 | 2016年3月1日(火)15:00〜16:30 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | The large impact of the discovery of the Higgs particle in 2012 at CERN pervades not only the high-energy physics field but also the field of condensed matter physics, because of the deep connections of these two fields. A Higgs mode emerges as a collective oscillation of order parameter amplitude in various ordered phases of condensed matter systems including Bose gases in optical lattices, s-wave superconductors, superfluid 3He, and magnetic materials. In this work, we study collective modes of superfluid Bose gases in optical lattices combined with potential barriers [1]. In the vicinity of the quantum phase transition to a Mott insulator at a commensurate filling, particle-hole symmetry emerges such that there exist a gapless Nambu-Goldstone (NG) phase mode and a gapped Higgs amplitude mode. We consider two kinds of potential barrier: one does not break the particle-hole symmetry while the other does. Including effects of both kinds of barrier, we derive the Ginzburg-Landau equation for the superfluid order parameter, which is used for analyzing the collective modes. In the presence of the former barrier, we find bound states of Higgs mode that have binding energies lower than the gap of the Higgs mode in bulk and are localized around the barrier. We also analyze tunneling properties of the NG mode incident to both barriers. It is shown that the latter barrier couples the Higgs bound states with the NG mode, leading to Fano resonance mediated by the bound states. I plan to briefly talk about recent results on triplet intra-valley pairing state of Dirac fermions. [1] T. Nakayama, I. Danshita, T. Nikuni, and S. Tsuchiya, Phys. Rev. A 92, 043610 (2015). |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
フォトクロミック分子ジアリールエテンの科学
講師 | 横島 智氏 (東京薬科大学薬学部) |
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日時 | 2016年1月13日(水)16:30〜18:00(講演は1時間程度) |
場所 | 14棟218号室(ディスカッションルーム8)) |
概要 | フォトクロミック分子とは、光を吸収するとその分子構造が 変化し、その結果として光の吸収波長が変化する(色が変わる) 分子のことである。フォトクロミック分子には様々なものが あるが、なかでもジアリールエテンという分子は光化学反応に 対する耐久性にすぐれ、また、光吸収によって生じる2つの構造 異性体が互いに熱に対して安定である(2つの構造間を遷移 するための活性化エネルギーが高い)ため、2状態系として 扱うことが出来、分子スイッチとしての応用が期待されている。 この分子の持つ可能性を探るため、これまでに、分子を様々な 基で修飾したりまわりの環境を変更したりすることにより、 フォトクロミック分子としての性質をどれだけ変更できるか、 ということに多くの研究が割かれてきたが、近年は、 フォトクロミック分子の集合体が光に対してどのように 反応し、まわりの環境や集合体としての性質に変化が 生じるか、ということに研究の主体が移りつつある。 本講演では、ジアリールエテンの研究の中でも、講演者が 関わってきた内容を中心として幾つかの内容を取り上げ、 物理の聴衆にも興味が持てるように話をしてみたい。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
電解質溶液中の同符号荷電コロイド粒子間実効引力と蛋白質溶液の相図
講師 | 秋山 良 氏 (九州大学大学院理学研究院化学部門) |
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日時 | 11月24日(火)14:45~16:30 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | 『同符号の荷電粒子が強く引き合う。』その様に聞いて奇異に感じる方も多いのでは無い だろうか?実際、学生さんが試験の答案にそう書いたらペケである。ところが、その様な 現象は実際にしばしば観察されている。例えば、DNAの様に負に帯電した分子の鎖がピン と伸びた構造にはならずにクーロン斥力に反してコンパクトな構造に潰れてしまったりす る事がある。あるいは、酸性タンパク質の様な負に帯電したコロイド粒子が強く引き合っ て構造体を作る現象が見られる。この一見すると不思議な現象を理解する鍵は、体液が大 抵は電解質溶液だからであると、我々は考えた。そこで、荷電剛体球モデルで電解質溶液 中のマクロアニオン(巨大陰イオン)の間の実効相互作用を計算した。方法は統計力学理 論の1つである液体の積分方程式理論である。計算結果は、狭い電解質濃度域でのみ、マ クロアニオン間に強い引力が現れ得る事を示している。このごく狭い電解質濃度域は生体 内の電解質濃度に近い。驚いた事に実験でもこの電解質濃度に対するリエントラントな振 る舞いを見る事ができる。講演では、なぜ実効引力が発生するのか、そして電解質溶液が 高濃度になると実効引力が消失するのはなぜか、そしてタンパク質溶液の興味深い相挙動 とタンパク質が作る構造体やその動的な分子マシンとしての挙動などについて議論したい。 理論研究であるが、実験家の方に対して何らかのアイディアを提供できる講演が出来れば と考えている。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Nano-Spintronic Devices
講師 | 廣畑 貴文 氏 (University of York, UK) |
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日時 | 11月4日(水)10:45~12:15 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | 強磁性NiFeナノ・ワイヤと非磁性Cuナノ・ワイヤを用いた面内スピンバルブ素子 を作製し、そのCuナノ・ワイヤ中央の構造を検討した。図1(a)に示すように非磁 性体ナノ細線の形状を直角三角形に加工することで、一方向のスピン流[図1(a)に おいては左から右の流れ]のみを散乱させることに成功した。直角三角形の底辺が 100 nmで高さが60 nmの場合には、直線の場合に比べ7倍以上の増幅を世界で初め て実現した[図1(b)]。このようなスピン流の増幅効果は、非対称な非磁性体ナノ 細線を用いた場合にのみ観察されることが、数値計算からも実験からも確認され た[1]。このような形状を利用したスピン流の増幅は、消費電力の見地からも非常 に有望であり、将来のスピントロニクス素子応用において鍵となる技術である。 [1] R. M. Abdullah et al., J. Phys. D: Appl. Phys. 47, 482001(FTC) (2014). |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Coffee Physics: 熱水面の上の微小水滴のダイナミクス
講師 | 中西 秀 氏 (九州大学 理学研究院 物理学部門・教授) |
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日時 | 7月17日(金)16:30〜18:00 |
場所 | 14棟212号室(ディスカッションルーム2) |
概要 | 朝日の下で一杯の熱いコーヒーを飲んでいるとき、コーヒーの表面の白い膜の に気づいたことはないだろうか? その膜は、表面に極めて近いところにあっ て、ほとんど水面に張り付いているようにも見える。熱水による上昇気流でゆ らゆら揺らいでいるが、膜の上に時おり異様に速く割れ目が走り、しばらく見 ていると、亀裂にも似た幅1mm程の裂け目がいくつも開いて、膜に不思議なパター ンが現れる。我々はこの現象を、高速度ビデオカメラを取り付けた顕微鏡を用 いて観察し、以下のような興味深い事実を明らかにした。1) この白い膜は、大 きさが10μm程度でかなり大きさのそろった微小水滴からなる。2) 水滴は、水 面から10-100μm上に浮揚している。3) 膜の亀裂は水滴の集団的な消失で、速 度が1-2m/sの表面波の波面として伝播する。4)それは、たった一つの水滴の 消失による水面の攪乱をきっかけに引き起こされる。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
素粒子理論と超弦理論
講師 | 檜垣 徹太郎 氏(慶應義塾大学理工学部物理学科) |
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日時 | 6月25日(木)14:45〜16:15 |
場所 | 12棟216番教室 |
概要 | 自然界には4つの力が存在する。それは「強い力」「電磁気力」「弱い力」「重力」である。 このうちの前3つは、量子論である素粒子標準模型によって説明可能で、 実際に実験・観測を通じて多大な成功をおさめてきた。 一方で、多くの宇宙論的側面はこれによって説明できない。 例えば銀河団の起源となる暗黒物質の存在、加速度膨張宇宙の起源、 さらに量子重力理論(大雑把に一般相対論の量子化)がそれにあたる。 また素粒子標準模型は、一見非常に複雑で、さらなる基礎理論の有効理論だと思われている。 それゆえ、その起源も宇宙論と同様に謎である。 これらの謎を同時に説明できる統一理論の候補と思われているのが超弦理論である。 超弦理論は、電子のような素粒子ではなく、弦や膜などを基礎的自由度と考える理論である。 この話では素粒子論の超弦理論的理解とともに、現状を踏まえて問題点を議論する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
スピントロニクス〜学理から産業応用まで〜
講師 | 湯浅 裕美氏 (九州大学大学院システム情報科学研究院) |
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日時 | 6月25日(木) 10:45〜12:15(講演は1時間程度) |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | 1998年に発見された巨大磁気抵抗効果(GMR効果)は、ハードディスクドライブに 技術革新をもたらし、現在までに市場規模4兆円に迫る産業に成長しました。 この成功体験を経てスピントロニクス研究分野は更に大きく発展し、数々の新現象 が実証されるという、基礎研究と応用研究、産業の好循環が生まれています。 本講義では、物理学研究が産業に結びついた軌跡を、応用研究の例を通して 紹介し、今後期待されるスピントロニクス研究の展望をお話します。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Advanced scanning tunneling microscopy --- time resolved RF-STM and Josephson STM ---
講師 | 木村 光氏 |
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日時 | 2月4日(水)14:45〜16:15(講演は1時間程度) |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | Scanning tunneling microscope (STM) can achieve the atomic resolution image, while the time resolution is limited due to the narrow bandwidth of its control electronics. STM with a normal metal tip enables us to measure the local quasiparticle spectrum in superconductors, while the amplitude of the superconducting condensate cannot be obtained directly via the BCS theory for the high-TC superconductors (HTSC). In this talk we present the two different types of STMs to overcome these drawbacks. One is the time resolved RF STM. We have constructed a STM and combined it with a tunable femtosecond laser (210 nm to 1040 nm) to probe single molecules with simultaneous spatial and temporal resolutions. Employing the RF lock-in amplifier to measure the laser-induced tunneling current that is directly synchronized with the high repetition rate of the laser (~80 MHz), time resolved measurement of single molecules with atomic scale resolution can be achieved by varying the time delay between pairs of laser pulses in the two-pulse correlation or two-color pump-probe configuration. A femtosecond laser system with widely tunable wavelength enables resonant excitation of single molecules that are partially decoupled electronically from the underlying metallic substrate by a thin oxide or additionally atomic or molecular layers. The experimental arrangement allows measurement of molecular lifetimes by two-photon photoemission spectroscopy and microscopy. Another is the Josephson STM to probe the superconducting condensate of the high-Tc superconducting cuprates directly. Using a STM with a superconducting tip, STM-based Josephson junctions are implemented to directly probe both the quasiparticle spectrum and the phase of the superconducting condensate via the Josephson Effect. We present data from Josephson junctions formed between superconducting tips and Bi2Sr2CaCu2O8+δ single crystals. These results clearly show c-axis Josephson tunneling between a conventional superconductor and both overdoped and optimally doped Bi2Sr2CaCu2O8+δ. Josephson measurements at different surface locations yield local values for the Josephson ICRN product, indicating an inhomogeneous structure of the ICRN product in overdoped Bi2Sr2CaCu2O8+δ on a nanometer length scale. Corresponding energy gap measurements were also performed at the same locations and an unexpected inverse correlation was observed between the local ICRN product and the local energy gap. |
対象 | 基礎理工学専攻大学院生、教職員、他専攻聴講可 |
電子ネマチック相転移に伴うグリフィスの翼
講師 | 山瀬 博之氏 (独立行政法人 物質・材料研究機構) |
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日時 | 12月17日(水)16:30〜18:00(講演は1時間程度) |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | 自発的対称性の破れは、結晶化、超伝導、磁性等、物性論には多くの例が 見受けられる。本講演では、電子ネマチックと呼ばれる、電子系が自発的に 方向対称性のみを破った新奇な量子状態を取り上げる。電子ネマチック相は、 銅酸化物・鉄系高温超伝導体、ルテニウム酸化物、ウラン化合物、2次元 電子系で実現している可能性が議論されており、近年大きな注目を集めている トピックである。実際の物質では、結晶構造に起因する僅かな異方性が存在 することが多い。また、一軸圧や歪みを系に課すことで異方性を人為的に 制御することも可能である。電子ネマチック秩序は、そのような異方性と 直接的に結合するために、電子ネマチック不安定を示す系では、異方性は 極めて重要な役割を果たすことが期待される。本講演では、電子ネマチック 相転移現象における異方性の効果を理論的に明らかにする。 実際、異方性が入ることで、電子ネマチックの相図は定性的に大きく変化し、 2次元と1次元の系を内挿するように「グリフィスの翼」が生成される。 翼を横切ると系の異方性が非連続的に変化する。すなわち、異方性が入る ことで既に方向対称性は破れてはいるが、電子ネマチック物性は一次相転移 現象として現れる。グリフィスの翼は、ネマチック秩序パラメタの揺らぎに 対して極めて敏感であり、揺らぎによって容易に2つに引き裂かれてしまう。 その結果、基底状態は準粒子が定義出来ないような非フェルミ液体状態に なることが期待される。以上の結果を、銅酸化物、ルテニウム酸化物、 擬一次元金属、冷却原子系との関連を踏まえて議論する。なお、解析は 平均場理論および汎関数繰り込み群を用いて行う。 |
対象 | 基礎理工学専攻大学院生、教職員、他専攻聴講可 |
Quantum control and simulation with 2-dimensional arrays of trapped ions
講師 | John J. Bollinger 氏 (National Institute of Standards and Technology, Boulder) |
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日時 | 12月6日(土)13:00~14:30 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | Trapped ions, when cooled to sufficiently low temperatures form crystalline arrays. I will describe our efforts to extend the quantum control techniques developed with linear chains of ions in rf traps to two-dimensional triangular arrays of hundreds of ions formed in a Penning trap. Penning traps use a uniform magnetic field and static electric fields to confine charged particles. Our qubit is the 124 GHz electron spin-flip transition in the ground state of Be+ in the 4.5 T magnetic field of the Penning trap. We control the spins with an effective transverse magnetic field generated with 124 GHz microwaves. Spin-dependent optical dipole forces are used to engineer long range Ising interactions between the ion qubits, and to characterize the motional degrees of freedom of the trapped ions. This system has the potential for simulating quantum non-equilibrium phenomena with an intractable number of spins. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
光周波数コムを用いた分光と超高速波形制御/計測システム
講師 | 塩田 達俊 氏 (埼玉大学大学院理工学研究科・准教授) |
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日時 | 8月22日(金)15:00~16:30 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | 光の絶対周波数を規定する標準技術として知られる光周波数コムは、分光や距 離・形状計測などの研究に応用されてきた。近年では、デュアルコム分光法の様に、 光周波数コムが有する広帯域・高速性といった特性を最大限利用するための研究提案 が広がっている。本講演では、単一の半導体レーザーを種光としたギガヘルツ間隔の 光周波数コムを光変調器によって周波数走査する技術と、その技術を分光へ応用した 実験結果を紹介する。また、光周波数コムの振幅・位相スペクトルをベクトル制御す ることによる光波形制御・計測システムに関する研究も紹介する。 |
対象 | 理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
南部・ゴールドストーンボソンの一般論に関する最近の発展
講師 | 渡辺 悠樹 氏 (Dept. of Physics, Univ. of California, Berkeley) |
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日時 | 2014年7月22日(火)14:45~16:15 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | 自発的対称性の破れに伴って現れる「南部・ゴールドストーンボソン(NGB)」の 研究の歴史は古く、応用例は素粒子論から物性論に至り枚挙に暇がない。 しかし、ローレンツ対称性を仮定しない場合の一般的な取り扱いは 近年までなされてこなかった。 NGBに関する一般論を構築する上で、オーダーパラメーターの 低エネルギーゆらぎを「系の対称性」だけから 記述する事を可能にする有効ラグランジアンの方法は非常に強力な基礎となる。 本講演ではまず、この低エネルギー有効理論について分かりやすく解説し、 NGBの数や分散関係についてまとめる。この準備をもとに、 ソリトンの並進ゼロモードや、超流動界面に現れる奇妙な分散関係を もつドメインウォール揺らぎを議論する。 最後に、Fermi面近傍の擬粒子励起とNGBとの相互作用を一般的に取り扱い、 どんな場合にLandauのFermi流体理論が破綻し、かつNGBが過減衰(overdamp)し 粒子的とならないのかを議論する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
フェルミ超流動・超伝導体における量子渦と準粒子束縛状態
講師 | 堤 康雅氏 (理化学研究所) |
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日時 | 2014年6月27日(金)14:45~16:15 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | 巨視的量子現象である超流動・超伝導状態は巨視的波動関数により記述される。 超流動・超伝導体中の位相欠陥である量子渦は、巨視的波動関数の一価性の要請 から位相変化が量子化される。特に、フェルミオンのクーパー対から成る超流 動・超伝導体の量子渦には、対破壊された準粒子が束縛されている。1つの波動 関数で記述されるスピン一重項超伝導体における量子渦の準粒子束縛状態につい てはよく理解されている。一方で、多成分の波動関数で記述される超流動・超伝 導体で形成される様々な量子渦の準粒子束縛状態について系統的な理解はされて いなかった。本講演では、スピン三重項p波状態の多自由度を使った超流動ヘリ ウム3-B相の多様な量子渦を例として、準粒子束縛状態と量子渦の離散対称性の 密接な関係を示す。さらに、特別な対称性を持つ量子渦にはゼロエネルギーの束 縛状態が存在し、生成と消滅の演算子が等しいマヨラナ準粒子となっていること も紹介する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
対称性によって守られたトポロジカル超流動・超伝導
講師 | 水島 健氏 (岡山大学大学院自然科学研究科) |
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日時 | 2014年5月20日(火) 14:45-16:15 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | トポロジカル超流動・超伝導体とは、バルクの性質は一見すると通常のBCSと変 わらないが、その表面や界面にマヨラナ粒子と呼ばれるエキゾチックな準粒子を 伴う物質である。本講演では、時間反転対称性、結晶対称性、秩序変数の内部対 称性等がどのようにしてトポロジカル超伝導特性を「守り」、さらに、そこに現 れる物理現象を豊かにするのか、ということを紹介する。 講演では、異方的超流動・超伝導の教科書的物質である3Heや重い電子系超伝 導UPt3を具体例として、内部対称性や結晶対称性とトポロジカル超伝導特性との 関連性を明らかにしていく。いずれの物質も有限磁場においてトポロジカル量子 相転移が起こるが、特に超流動3Heではトポロジカル相転移と自発的対称性の破 れが同時に起こる量子臨界点が存在する。このトポロジカル量子臨界点近傍で期 待される様々な量子現象について紹介する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Melting transition of hard disks: New algorithms, new insights
講師 | Werner Krauth 氏 (Laboratoire de Physique Statistique, Ecole Normale Superieure, Paris, 教授) |
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日時 | 2013年12月2日(月)13:15〜14:30 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | The hard-disk model has exerted outstanding influence on computational physics and statistical mechanics. Decades ago, hard disks were the first system to be studied by Markov-chain Monte Carlo methods and by molecular dynamics. It was in hard disks, through numerical simulations, that a two-dimensional melting transition was first seen to occur even though such systems cannot develop long-range crystalline order. Analysis of the system was made difficult by the absence of adequate simulation methods. In recent years, we have developed a number of powerful Monte Carlo algorithms for hard disks and related systems. I will in particular show how the powerful event-chain Monte Carlo algorithm has allowed us to show that hard disks melt with a first-order transition from the liquid to the hexatic and a continuous transition from the hexatic to the solid. I will finish with discussions on the general theory of two-dimensional melting and on the generalizations of the event-chain algorithm. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Melting transition of hard disks: New algorithms, new insights
講師 | Werner Krauth 氏 (Laboratoire de Physique Statistique, Ecole Normale Superieure, Paris, 教授) |
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日時 | 2013年12月2日(月)13:15〜14:30 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | The hard-disk model has exerted outstanding influence on computational physics and statistical mechanics. Decades ago, hard disks were the first system to be studied by Markov-chain Monte Carlo methods and by molecular dynamics. It was in hard disks, through numerical simulations, that a two-dimensional melting transition was first seen to occur even though such systems cannot develop long-range crystalline order. Analysis of the system was made difficult by the absence of adequate simulation methods. In recent years, we have developed a number of powerful Monte Carlo algorithms for hard disks and related systems. I will in particular show how the powerful event-chain Monte Carlo algorithm has allowed us to show that hard disks melt with a first-order transition from the liquid to the hexatic and a continuous transition from the hexatic to the solid. I will finish with discussions on the general theory of two-dimensional melting and on the generalizations of the event-chain algorithm. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
液体の統計力学理論による生体分子の溶媒和
講師 | 吉田 紀生 氏 (九州大学理学部化学科) |
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日時 | 2013年11月13日(水)13:00〜14:30 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | 蛋白質やDNAといった生体分子は生体内で水分子に囲まれ、 その構造を維持し、 機能を発揮している。 個別に存在するときは単なる物質である水と生体分子が、 相互作用することで生命としての活動が可能になる。 したがって、 生命現象の分子論的理解には水(溶媒)に関する深い考察が不可欠である。 このような背景の下、 我々は液体の統計力学理論を中心とした理論展開を行い、 広く溶液内化学・生物過程に関する研究を行ってきた。 本談話会では、 液体の積分方程式理論の概要を説明し、 いくつかの応用例を紹介しつつ、 最近の理論的展開を説明する予定である。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Adhesion of Membranes and Filaments on Patterned Surfaces
講師 | Olivier Pierre-Louis氏(フランス Universite' Lyon 1 - Claude Bernard) |
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日時 | 2013年11月5日(火)15:00〜16:00 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | We will start with a theoretical investigation of the adhesion of membranes and filaments on patterned substrates. Our central question is the coupling between substrate roughness and the bending rigidity of these soft objects. Using a 1D model, we show that membranes and filament exhibit an infinite series of partial unbinding transitions ended by a complete unbinding transition at zero temperature. We then show that filaments exhibit an unbinding transition at finite temperature, but the question of membranes at finite temperature is still open. Then, we discuss experiments with graphene. We show that our model predicts unbinding of multilayer graphene on amorphous SiO2 substrates when it contains more than two layers. This is found to be in quantitative agreement with several experiments. We also discuss experiments of graphene adhesion with nanoparticles intercalated between the graphene and the substrate. In this case, in-plane strain is more important than bending rigidity. We find a rippling transition, a ripple percolation transition, and an unbinding transition, which are analyzed quantitatively. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Excited-State Quantum Phase Transitions in Dicke Superradiance Models
講師 | Tobias Brandes 氏 (Technische Universitaet Berlin) |
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日時 | 2013年10月15日(火)14:00〜15:30 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | We derive analytical results for various quantities related to the excited-state quantum phase transitions in a class of Dicke superradiance models in the semiclassical limit. Based on a calculation of a partition sum restricted to Dicke states, we discuss the singular behavior of the derivative of the density of states and find observables like the mean (atomic) inversion and the boson (photon) number and its fluctuations at arbitrary energies. Criticality depends on energy and a parameter that quantifies the relative weight of rotating versus counter-rotating terms, and we find a close analogy to the logarithmic and jump-type non-analyticities known from the Lipkin-Meshkov-Glick model. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Can We Control the Heat Current? A major societal problem for the 21st century
講師 | Giulio Casati氏(イタリア Universita' della Insubria 教授) |
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日時 | 2012年9月25日(火)13:00〜14:30 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | The understanding of the microscopic mechanisms which determine the macroscopic laws of heat transport is one of the main problems of statistical mechanics. On the other hand, providing a sustainable supply of energy to the world’s population will become a major societal problem for the 21st century as fossil fuel supplies decrease and world demand and environmental concern increases. Thermoelectric phenomena, which involve the conversion between thermal and electrical energy, and provide a method for heating and cooling materials, are expected to play an increasingly important role in meeting the energy challenge of the future. Here we discuss a new approach , which is rooted in nonlinear dynamical systems, for increasing the efficiency of thermoelectric machines. The main focus will be on the physical mechanisms, unveiled by these dynamical models, which lead to high thermoelectric efficiency, approaching the Carnot limit. References - M. Terraneo, M. Peyrard and G. Casati,: " Controlling the energy flow in nonlinear lattices: a model for a thermal rectifier" Phys. Rev. Lett. 88, 094302 (2002). - Baowen Li, Lei Wang, and Giulio Casati: "Thermal Diode: Rectification of heat flux". Phys. Rev. Lett. 93, 184301 (2004). - Baowen Li, Lei Wang, and Giulio Casati: "Negative differential thermal resistance and thermal transistor". Appl. Phys. Lett. 88 143501 (2006). - Giulio Casati, C. Mejia-Monasterio and T. Prosen, " Magnetically Induced Thermal Rectification " Phys. Rev. Lett. 98,104302 (2007). - G. Casati, C. Mejia Monasterio, and T. Prosen: "Increasing thermoelectric efficiency towards the Carnot limit" Phys. Rev. Lett. 101, 016601 (2008). -G. Benenti and G. Casati, "Increasing thermoelectric efficiency: Dynamical models unveil microscopic mechanisms" Phil. Trans. R. Soc. A. 369,466 (2011). - S.Lepri and G. Casati, "Asymmetric wave propagation in Nonlinear systems". Phys. Rev. Lett. 106, 164101 (2011). |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Coarse-grained de novo simulations for predicting structures and exploring amyloid aggregates associated with neurodegenerative diseases (蛋白質の構造予測と神経変性疾患に関連するアミロイド重合ペプチドの粗視化シミュレーション)
講師 | Philippe Debrreumaux氏 (パリ大学 生物物理化学研究所 理論生化学研究室(UPR9080) 主任研究員 、CNRS) |
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日時 | 2012年9月10日(金)10:30〜11:30 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | Debrreumaux 氏は、 蛋白質の分子シミュレーションをされています。 蛋白質のシミュレーションの粗視化モデルを開発して、レプリカ交換シミュレーションなどをされています。。 最近は、これらの方法を用いて、40残基程度のアミロイドβペプチドの重合に関する研究もされています。 これらに関するお話をして頂く予定です。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
倒立棒制御から集団追跡と逃避:ノイズと遅れの現象と数理
講師 | 大平徹氏(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授) |
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日時 | 2012年8月24日(金)16:30〜18:00 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | このセミナーでは「ノイズ」や「ゆらぎ」と情報伝達 や相互作用の「遅れ」が 生み出す、いくつかの現象と数理について紹介をします。この二つの要素は、単 純な様相 しか示さないようなシステムにおいても、 多くの複雑な現象を生み出 します。たとえば、人間が指先で棒を倒立させる、倒立棒制御のような単純な動 作にも、この二つの要素は存在します。棒の傾きや揺らぎを検知して、倒立状態 を維持しようとするには指先の動作に至るまでに、数百ミリ秒を要します。この 制御には個人差がありますが、ノイズによる不安定な動きと、遅れからくる腕の 振動などが共通して見られます。工学的にはこれらの影響を除去することが、よ りよい制御につながると通常は考えられています。しかし、悪いことばかりでは ありません。棒を倒立させている手と反対の手に、物を持って振ってもらいま す。あえて意図的な「ゆらぎ」を加えるのです。すると適度な揺らぎが遅れと相 まってか、逆に制御がよりよくできる場合が出現するのです。数理的にはこのよ うな現象は「遅れ確率共鳴」と呼んで、単純なモデルで解析をしています。その 他、符号化システムや歩行流の衝突などのモデルでの「ゆらぎ」や「遅れ」の生 み出す現象を紹介します。 また、あわせて最近提案しました「集団追跡と逃避」のモデルについて紹介しま す。「おにごっこ」は多くの人が遊んだ経験のあるゲームですが、追跡と逃避の 数学は300年以上もの長い歴史を持ち、おもに1対1の状況が研究されてきま した。一方では、動物、昆虫、自動車、人などの「群れ」の研究が、近年数理、 物理の分野で盛んにおこなわれるようになりました。「集団追跡と逃避」ではこ の二つの研究の流れを融合して、集団対集団が「おにごっこ」をするような状況 をモデル化して、新しい研究課題として提案してい ます。集団内の個々の動き は非常に単純な場合でも、集団としては意外と複雑な様相があることを報告しま す。また、適度に個々の動きに揺らぎを加えると、全体のゲームの終了までの時 間が最適化されるなどの「確率共鳴」的な現象が見えました。さらに遅れが加 わったときにどのような状況が見えるか、また応用の方向などの展望も議論した いと考えます。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
カナダ Advanced Laser Light Sourceにおける高強度テラヘルツ光源の開発とその応用
講師 | 尾崎恒之氏(カナダ Université INRS (Institut national de la recherche scientifique)) |
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日時 | 2012年8月21日(火)17:00〜18:30 |
場所 | 14棟218号室(ディスカッションルーム8) |
概要 | カナダの科学技術大学院大学である INRSでは超高速光科学に関する研究が活発であり、 複数の研究グループがさまざまなフェムト秒レーザーを使った研究を推し進めている。 また、モントリオール郊外にあるINRS のキャンパス内には Advanced Laser Light Source(ALLS) と呼ばれる国際共同利用レーザー施設がある。ALLS では 200 TW(4.6 J、23 fs、10 Hz)から 5 mJ、5 kHz (25 fs)にわたるさまざまな Ti:sapphireレーザーを用意し、 カナダ国内の研究者に限らず、世界中のユーザーに利用を公開している。講演者は ALLSの運営を担当しているが、同時に同施設を利用して、プラズマを非線形媒質として 使う高次高調波や、フェムト秒レーザーの眼科応用等の研究を行なってきた。 本講演では、ALLS を使った講演者のもう一つの研究テーマである、高強度テラヘルツ光源の開発、 およびそれを使った非線形テラヘルツ分光の研究をご紹介する。最初は大型ZnTe結晶中の光整流効果(optical rectification)を利用した高強度テラヘルツ光源(テラヘルツ光電場 ~220kV/cm)を 開発し(F. Blanchard et al., Opt. Exp. 15, 13212 (2007))、これを使って n 型 InGaAs 中のテラヘルツ吸収飽和(L. Razzari et al., Phys. Rev. B 79, 193204(2009))や テラヘルツ・ポンプ=テラヘルツ・プローブ測定(F. Blanchard et al., Phys. Rev. Lett. 107, 107401 (2011))を行なってきた。また最近では レーザー励起空気プラズマ法により、5 MV/cm のテラヘルツ光電場に達するテラヘルツ光源を 実証している。このような高強度のテラヘルツ光を Ti:sapphire レーザーと同時に空気中で集光すると窒素「レーザー」を誘起されることがわかり、またこの「レーザー」強度が テラヘルツ光の(光強度ではなく)光電場強度に比例することを示した。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
The Role of Symmetries in Nanoplasmonics
講師 | Prof. Gabriel Molina Terriza (Macquarie University, Australia) |
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日時 | 2012年7月7日(土)14:00〜15:30 |
場所 | 22棟108号室 (物理学科会議室) |
概要 | In this talk I will describe a series of techniques to analyze experiments in nanophotonics with the use of the symmetries of Maxwell equations. I will also discuss several experimental techniques in order to control and exploit plasmonic resonances in metallic nanoscatterers. Finally, I will discuss some of the lines of research of my group involving the use of quantum optics techniques to measure nanostructures. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
「銀河中心のH3+」
講師 | 岡 武史氏(シカゴ大学宇宙物理教室、化学教室、エンリコフェルミ研究所) |
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日時 | 2011年11月9日(水)、13:00-14:30 |
場所 | 14棟202号室(セミナールーム2) |
概要 | 僕は、1981年〜1989年に慶應義塾大学理工学部物理学科教授を勤められた霜田光一先生の弟子です。先生はレーザーの草分けとして高名ですが、僕が東大大学院生だった1950年代後半にはマイクロ波分光学を先生から教わりました。1960年にレーザーが発明されて以後、僕もレーザーを使った分光研究を始めました。 H3+は宇宙の分子生成を支配していると考えられていましたが、そのスペクトルを見つけるのは大変困難でした。1980年、僕はレーザー分光法を使ってH3+の赤外線スペクトルを実験室で発見しました。それ以後、このスペクトルを使って惑星大気や星間空間でもH3+を見つけ、現在はH3+をプローブとして銀河中心の研究をしています。慶應義塾大学理工学部物理学科岡朋治准教授はマイクロ波を使って銀河中心を研究しており、毎年ディスカッションのために訪問しています。今年の訪問の機会に、H3+とは何か、どのように宇宙に存在するのか、その観測から何が解るか、などについて、学部学生にも解るように易しく話したいと思います。科学に興味のある方ならば誰でも解る話なのですが、僕が「現代化学」に書いた「天文学と化学」上(http://ci.nii.ac.jp/naid/40015219129)下(http://ci.nii.ac.jp/naid/40015255683)を予習してくださればなおよく解るはずです。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
「高強度テラヘルツ電磁場を用いた物性物理学研究の最前線」
講師 | 渡邉紳一氏(慶應義塾大学理工学部物理学科) |
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日時 | 2011年6月1日(水)、14:45-16:15 |
場所 | 12棟109番教室 |
概要 | 光と電波の境界周波数領域に存在し「未開拓の波」と言われてきたテラヘルツ電磁場も、 近年のフェムト秒レーザーテクノロジーと半導体デバイス技術の進歩により信頼 性の高い新しい分光・イメージング光源としての地位を確立しつつある。更に近 年ではテラヘルツ電磁場の高強度化が進み、それを用いた物質制御も活発に試み られている。本講演ではテラヘルツ電磁場とは何か、またその発生・検出方法を 基礎から解説し、最近のテラヘルツ電磁場を用いた物質制御研究まで段階を踏ん で紹介する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
「世代の謎をさぐる」
講師 | 吉岡興一氏(慶應義塾大学理工学部物理学科) |
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日時 | 2011年6月1日(水)、13:00-14:30 |
場所 | 12棟109番教室 |
概要 | 素粒子の標準模型によると、我々の物質場であるクォークとレプトンは、 質量パラメータのみが異なる3回のくり返しパターンを持っており、これを世代と呼ぶ。 「なぜ3世代あるのか?」「質量パラメータの値はどう決まるか?」などは、 現代の素粒子物理学における大きな謎であり、統一理論の構成や検証へ向けた 重要な足がかりとなる。本講演では、世代構造へのさまざまな実験・理論的 アプローチを概説し、近年の発展を紹介する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
ボルツマン定数の分光学的決定について
講師 | 山田 耕一氏(独立行政法人 産業技術総合研究所) |
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日時 | 平成22年12月7日(火)16:30-18:00 |
場所 | 22棟108号室(物理学科会議室) |
概要 | 光コムに位相同期したダイオードレーザーを用いると高度に精密な分光計測が可 能である。気相分子の振動回転スペクトルの形状を精密に測定し、そのスペクト ル線のドップラー幅の持つ温度情報から、基礎物理定数であるボルツマン定数を 分光学的に決定する可能性について、実験・解析両面から検討する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
QCD相転移とカイラル磁気効果
講師 | 福嶋 健二氏(慶應義塾大学理工学部物理学科) |
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日時 | 平成22年10月27日(水)13:00−14:30 |
場所 | 12棟209号室 |
概要 | QCD相転移には少なくともふたつの秩序変数があり、 格子QCDシミュレーションの結果等から、有限温度QCD の相転移の様子はある程度理解されてきた。しかし トポロジー的な励起の微視的な中身と、相転移との関係 は、まだ完全に理解されたわけではない。最近、非常に 強い外部磁場を印加した状況では、QCD物質中の トポロジー的な性質が比較的容易に観測にかかるのでは ないか、という可能性が指摘されている。いわゆる 「カイラル磁気効果」の発現であり、ここでは量子異常が 重要な役割を果たす。本講演ではQCD相転移と カイラル磁気効果について、最近の発展を含めて 解説する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
金属系におけるスピン流生成の微視的理論
講師 | 細野 一弘 氏(慶應義塾大学理工学部物理学科) |
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日時 | 平成22年10月20日(水)13:00−14:30 |
場所 | 12棟207号室 |
概要 | 近年、固体中のスピン自由度を積極的にデバイスに応用する 事を目的としたスピントロニクスが注目されつつある。この 分野では、スピン角運動量の流れであるスピン流を生成し、 検出したと考えられている実験がいくつか報告されてきた。 一方で、これらの実験の理論的解釈は十分に行われておらず、 現象論的な理解に留まっていた。本講演では、これらの実験 のベースとなっている現象を説明し、これまでに筆者らが行 ってきた微視的なアプローチによる解析結果により得られた 知見を報告する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
単分子接合における電気伝導特性:フォノンの影響
講師 | 植田暁子 氏 (ベングリオン大学) |
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日時 | 平成22年7月12日(月)14:45−16:15 |
場所 | 物理学科会議室(22-108) |
概要 | 近年、金属電極に単分子を架橋させた単分子接合の技術が 進歩し、分子エレクトロニクスへの応用や新奇物性の解明が 期待されている。このような系では、電子と有機分子の 振動モード(フォノン)の自由度の結合が強いため、その 効果を電気伝導を通して観測できる。理論では、このような 系のモデルとして、量子ドットとフォノンの単一モードが 結合した系を考えることができる。本講演では、このような 系でのdcコンダクタンスとacコンダクタンスの違い、線形応答と 有限バイアスの場合の違い、フォノンのショットノイズへの 影響等ついて議論する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
1次元水素原子の量子力学
講師 | 迫田 誠治 氏 (防衛大学校応用物理学科) |
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日時 | 平成22年1月18日(月)16:30−18:00 |
場所 | 物理学科会議室(22-108) |
概要 | 1次元水素原子について量子力学的考察を行い,物理的に重要な幾つか の結論 を導いたのは Loudon の論文[1]であった。この論文の結 果は直ちに強磁場中 での半導体へと応用され[2],その励起子が Loudon の提 唱した「1次元水素 原子」模型により記述できることが実験的にも確認されている。その後 π共役 高分子[3]や半導体量子細線[4],さらに近年理論的にも実 験的にも活発な研究 がなされているカーボンナノチューブ等,各種の擬1次元系における励 起子効 果が確認されており,その理論的な記述にも,Loudon の模型は 重要な役割を 果たしている。 筆者はLoudonとは全く独立に,経路積分の問題として1次元クー ロン系を考察 し,厳密な結果[5,6]を得ることができた。しかし,そこから得 られた結論は Loudon の結果を一部否定するものであった。本稿では Loudon の考察に対す る問題点の指摘からはじめて,それを量子力学の厳密な枠組みの中で如 何に解 決し,新たな理解に達するかを紹介する。厳密な取り扱いにより得られ た,新 たな結果の重要性を確認するために,Heinzらのカーボンナノ チューブの励起 子に関する実験結果[7]についても新たな解析に基づく解釈を提 示したい。 これらの考察を通して,文献[6]のTsutsuiらによって示さ れた,特異1次元系 の量子力学における境界条件の重要性を指摘したい。 文献 [1] R. Loudon, Am. J. Phys. 27, 649(1959). [2] R. J. Elliott and R. Loudon, J. Phys. Chem. Solids 15, 196(1960). [3] S. Abe, J. Phys. Soc. Jpn. 58, 62(1989). [4] T. Ogawa and T. Takagahara, Phys. Rev. B 43, 14 325(1991), Phys. Rev. B 44, 8138(1991). [5] S. Sakoda, Mod. Phys. Lett. A 23, 3057 (2008). [6] I. Tsutsui, T. Fulop and T. Cheon, J. Phys. A: Math. Gen. 36, 275 (2003). [7] F. Wang, G. Dukovic, L. E. Brus, and T. F. Heinz, Science 308, 838 (2005). |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Perspectives on the quantum Zeno paradox
講師 | Wayne M. Itano 氏 (National Institute of Standards and Technology) |
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日時 | 平成21年7月15日(水)15:00−16:30 |
場所 | 物理学科会議室(22-108) |
概要 | As of July 2009, there were approximately 709 citations to the seminal 1977 paper of Misra and Sudarshan that pointed out the quantum Zeno paradox (more often called the quantum Zeno effect). In simple terms, the quantum Zeno effect refers to a slowing down of the evolution of a quantum state in the limit that the state is observed continuously. There has been much disagreement as to how the quantum Zeno effect should be defined and as to whether it is really a paradox, requiring new physics, or merely a consequence of ``ordinary'' quantum mechanics. The experiment of Itano, Heinzen, Bollinger, and Wineland, published in 1990, has been cited around 415 times and is the one most often called a demonstration of the quantum Zeno effect. Given that there is disagreement as to what the quantum Zeno effect IS, there naturally is disagreement as to whether that experiment demonstrated the quantum Zeno effect. Some differing perspectives regarding the quantum Zeno effect and what would constitute an experimental demonstration will be discussed. |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
X線回折・散乱による磁性体RNiC2の電荷密度波の研究
講師 | 下村晋 氏 (慶應義塾大学理工学部物理学科) |
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日時 | 平成21年7月13日(月)16:30−18:00 |
場所 | 12−101 |
概要 | 最近、SmNiC2の電気抵抗が特異な温度依存性を示すこ と、さらにその原因が電荷密度波と磁気秩序との相関にあるとして理解 できることが、実験的に明らかとなった。放射光を用いたX線回 折・散漫散乱・非弾性散乱実験の結果を中心に紹介する。また、他の RNiC2化合物(R:希土類元素)に関する結果についても触れる。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
強相関フェルミオン系における新しい対称性の破れ:フェルミ原 子気体のFFLO超流動
講師 | 柳瀬陽一 氏 (東京大学理学系研究科物理学専攻) |
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日時 | 平成21年7月6日(月)16:30−18:00 |
場所 | 12-101 |
概要 | 自然界における対称性の破れが物理学における重要な概念であることは 言うまでもない。 超伝導・超流動の分野における最近の発展により、様々な対称性の破れ を伴う超伝導相・ 超流動相が発見され、大変注目を集めている。 ヘリウム3の超流動をはじめ、スピン3重項超伝導におけるSU(2) 対称性の破れ、 時間反転対称性が破れたカイラル超伝導、空間反転対称性が破れた超伝 導、 並進対称性が破れたFFLO超伝導、磁性超伝導、内部自由度を持つ原 子気体のBEC、 などが多くの具体例が挙げられる。 私は元々超伝導分野の研究を進めてきた者だが、本講演では、最近注目 している フェルミ原子気体のFFLO超流動についてお話しさせていただきたい。 この系ではBCS−BECクロスオーバーという大変興味深い現象が起 こることが知られている。 FFLO超流動が期待されるのはまさにそのクロスオーバー領域であ り、ある種の強相関 フェルミオン系と考えられる。 この系において、超伝導体とは異なる新しいFFLO相が期待されるこ とについてお話し、 今後の展望について議論する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
Characteristic length of an AdS/CFT superconductor
講師 | 前田健吾 氏 (芝浦工業大学工学部) |
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日時 | 平成20年10月8日(水)15:00−16:30 |
場所 | セミナールーム3(14棟203号室) |
概要 | 近年のRHIC(相対論的重イオン衝突器)における実験データから、クォーク・グルーオンプラズマがほぼ完全流体に近い流体であり、非常に小さな粘性を持つことがわかってきた.この小さな粘性は、AdS/CFT双対性によって理論的に予言されており、AdS/CFT双対性の正当性を示す一つの結果である。 今年になって、AdS/CFT双対性を超伝導体のような凝縮体に応用する試みが活発に行われている。本講演は、AdS/CFT双対性の正当性を示すことになったRHIC のデータと理論計算の結果を簡単に紹介した後、超伝導体にどの様に応用されているのか、最近行った仕事( arXiv:0809.3079)も踏まえて紹介する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
中性子非弾性散乱・X線小角散乱による構造不規則系の研究
(ラザフォード・アップルトン研究所滞在記)
講師 | 千葉文野氏 慶應義塾大学理工学部物理学科助教 |
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日時 | 平成20年4月30日(水)14:00−15:30 |
場所 | 物理学科会議室(22−108) |
概要 | 日本学術振興会海外特別研究員として英国のラザフォード・アップルト ン研究所に長期 滞在したので、その報告をする。(1)液体セレンの光学的振動モード についての完結 した研究について、および、(2)グラファイト結晶中の欠陥について の中性子非弾性 散乱実験とX線小角散乱実験による未完結の研究について、発表する。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
超放射ラマン散乱を用いた物質波のコヒーレント制御
講師 | 吉川 豊氏 東京大学大学院総合文化研究科助教 |
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日時 | 平成20年3月3日(月)16:00−17:30 |
場所 | 物理学科会議室(22−108) |
概要 | 中性原子気体のボース凝縮体(BEC)はその空間コヒーレン スの高さからしばしば原子レーザー、コヒーレント物質波などと形容さ れ、その量子状態の制御に関する研究が盛んに行われている。本講演で は、我々が行ってきた、超放射ラマン散乱という特殊な光散乱現象を用 いたBECのコヒーレント制御について紹介する。この方法を用い ることで非常に簡単な系でBECの内部状態、外部状態両方を制御 することができる。さらに原子集団の空間コヒーレンスの定量的評価や 空間コヒーレンスの多モード保存など様々な応用実験が可能となる。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
拡張アンサンブル法を用いた蛋白質のフォールディングシミュレーション
講師 | 光武亜代理 氏 慶應義塾大学理工学部物理学科助教 |
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日時 | 平成20年1月23日(水)13:00−14:30 |
場所 | 物理学科会議室(22−108) |
概要 | 本研究では、化学物理の理論に基づく計算機シミュレーションを 用いてタンパク質の立体構造予測や、フォールディング機構の解明を目 的としている。計算機シミュレーションを行う際、系のエネルギー関数 を正確に取り入れたり(特に、溶媒とタンパク質の相互作用を精 度良く見積もる必要がある)、シミュレーションがエネルギー極 小状態に留まるのを効率良く避けるために強力なサンプリング法を採用 することが非常に重要である。強力なサンプリング手法の1つとして拡 張アンサンブル法(マルチカノニカル法やシミュレーティッドテンパリ ング法やレプリカ交換法など)が挙げられる。これまで、これらの手法 をペプチド系に適用して有効性を示したり、新しい手法の開発を行って きた。また、物理化学に基づく溶媒効果を取り入れる試みをしてきた。 本セミナーでは、化学物理の理論に基づくシミュレーションによる蛋 白質の折れ畳み機構へのアプローチについての概要や、状況をお話し し、これまでの研究内容について述べる。 |
対象 | 物理学科学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
ソフトマター物理から見た生体膜
講師 | 好村滋行 氏 首都大学東京 大学院理工学研究科 准教授 |
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日時 | 平成19年6月27日(水)14:45−16:15 |
場所 | 物理学科会議室(22−108) |
概要 | 生体膜は様々な脂質やステロール、タンパク質、糖などで構成 されており、これらの物質は細胞の機能にとって不可欠な役割を 果している。最近の研究によって、これらの構成成分は生体膜中で 一様に分布しているのではなく、膜内の相分離によって飽和脂質や コレステロールを多く含むドメインを形成していることが明らか になりつつある。このドメインは生物学において「ラフト」と 呼ばれ、最近大きな関心を集めている。 我々は、生体膜のドメイン形成は本質的に「相分離」であると いう立場をとり、ラフト形成のメカニズムを物理的に理解する ことを目的とした。ただし、それは単なる相分離ではなく、 脂質二重膜の炭化水素鎖の状態を反映する「内部自由度」と 結合した相分離であると考える。講演では、このような ラフトの現象論的モデルについて報告する。また、生体膜は 流動性をもつため、相分離では流体力学的相互作用が重要な 役割を果たすと考えられる。そのため、混合生体膜における 流体力学モデルを提案し、ドメインの拡散定数のサイズ依存性や、 濃度揺らぎの減衰率などについて議論する予定である。 |
対象 | 物理学科3・4学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
X線溶液散乱を利用した情報伝達系蛋白質の離合集散計測
講師 | 秋山 修志 氏 独立行政法人 科学技術振興機構 さきがけ「生命現象と計測分 析」専任研究者 独立行政法人 理化学研究所 播磨研究所 宮野構造生物化学 訪問研究員 |
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日時 | 平成19年6月26日(火曜日) 13:00−14:30 |
場所 | 物理学科会議室(22−108) |
概要 | X線小角散乱はX線結晶構造解析の長所と短所を逆転させたような存在であり、結晶構造解析ほどの高分解能構造は望めないが、蛋白質分子の形状 や分子量を生理的な水溶液中で検証することができる。本発表では、SPring-8のBL45XUビームラインで行ったドメイン単位の構造解析(ガスセンサー蛋白質 CooA、2成分情報伝達系複合体)、離合集散系のリアルタイム計測(時計蛋白質)に関する研究例を紹介し、弱い相互作用で離合集散する蛋白質複合体の計測手法について議論を深めたい。 |
対象 | 物理学科3・4学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
タンパク質分子ダイナミクスの1分子計測
講師 | 横田浩章 氏 (財)東京都医学研究機構東京都臨床医学総合研究所一分子プロジェクト主席研究員、JSTさきがけ「生命現象と計測分析」個人研究者 |
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日時 | 平成19年5月23日(水)14:00〜15:30 |
場所 | 物理学科会議室(22−108) |
概要 | 従来の生化学や構造生物学の研究は、アボガドロ数オーダーの生体分子 の平均量を対象にしているが、1990年代に登場した1分子 計測技術により、集団的、時間的に平均化されない生体分子1分 子のダイナミクスを実時間で捉えることができるようになってきた。本 発表では、まず、私がこれまでに主に蛍光1分子イメージング技 術によって得たタンパク質1分子のダイナミクスの結果を、 1分子計測の発展の歴史を交えながら概説し、次に、1分子計測の 問題点、将来性、そして現在進めているDNA/タンパク質間相互 作用の1分子計測について紹介する。 |
対象 | 物理学科3・4学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
MAGNUS EFFECT: CLASSICAL PHYSICS, SUPERFLUIDS, OPTICS
講師 | Konstantin Yu. Bliokh (Institute of Radio Astronomy, Ukraine) |
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日時 | 平成19年1月16日(火)14:45〜16:15(4限) |
場所 | 物理学科会議室(22−108) |
概要 | We consider the transverse force affecting the evolution of various objects in different areas of physics: vortices in classical liquid, quantum vortices in super media, polarized light, optical vortices, and electrons with spin in semiconductors. Surprisingly, most of these objects are driven by the transverse force of the same form. This is due to its fundamental nature related to the Berry phase, parallel transport, and conservation of the angular momentum. In so doing, semiconductor spin Hall effect and superfluid Magnus force appear naturally in optics as novel exciting phenomena. |
対象 | 物理学科3・4学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
歪みSi薄膜並びに結晶における有効質量異常
講師 | 山内淳 氏(慶応義塾大学理工学部物理学科専任講師) |
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日時 | 平成18年12月20日(水)14:45〜16:15(4限) |
場所 | セミナールーム3(14−203) |
概要 | 日常的なマクロスコピックな系では、物質の形状が電子状態に与える効 果は ほとんどの場合無視できるし、歪み等の弾性的な変形を行うこと自体マ クロ な系では難しい。ところが、ナノメートルスケールになると状況は一変 する。 そこでは、形状が電子状態に無視できない影響を与え、歪みも 数%程度なら物 質を破壊せずに掛けることも可能になる。本談話会では、歪みを印加 し、薄膜 形状に閉じ込めた半導体Siにおいて有効質量が発散する現象につ いてお話しす る。背景となる半導体デバイスについても簡単に説明する予定である。 |
対象 | 物理学科3・4学生・大学院生・教職員、他学科聴講可 |
非可換ゲージ理論におけるボーテックス
講師 | 新田宗土氏(慶応義塾大学商学部専任講師) |
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日時 | 平成18年11月29日(水曜日)14:45〜16:15 |
場所 | 22−108(物理学科会議室 |
概要 | 超伝導体においてはMeissner効果によって、磁場は絞られてvortex(渦糸)が形成される。このvortexは、理論的には Abelian Higgs模型(ゲージ化されたGinzburg-Landau理 論)における、topologicalなソリトンである。第二 種/第一種超伝導体ではvortex間には斥力/引力が働 くが、それらの境界であるcritical couplingにおいては、力が キャンセルするために飛躍的に扱いやすくなる。 素粒子の統一理論は、非Abelian(非可換)ゲージ理論に よって記述される。本講演では、非Abelianゲージ理論の入門的 なレビューを行った後、そこにも同様のvortexが現れることを議 論する。特にcritical couplingにおけるvortexのダイナ ミクスを議論する。 時間があれば、宇宙論における宇宙ひもの再結合確率の計算にも応用 できることを紹介する。 [1] Moduli space of non-Abelian vortices, Phys.Rev.Lett. 96 (2006) 161601 [hep-th/0511088]. [2] Universal Reconnection of Non-Abelian Cosmic Strings,hep-th/0609214. |
対象 | 物理学科学生、大学院生、教職員、他学科聴講可 |
高時間分解能X線回折システムの構築とその光受容蛋白質への応用
講師 | 岡俊彦氏(慶應義塾大学理工学部物理学科助手) |
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日時 | 平成18年10月11日(水曜日)14:00〜15:30 |
場所 | 22−108(物理学科会議室) |
概要 | SPring-8のBL40XUにおいて、幅6μs程度のパルスX線を用いて生体試料からの回折・散乱を測定するシステム を構築した。このX線パルスをYAGレーザーと同期させ、光受容 蛋白質バクテリオロドプシンの光反応サイクルでの構造変化を 6μs分解能で測定した例とともに紹介する。 |
対象 | 物理学科学生、大学院生、教職員、他学科聴講可 |
自励振動する浮沈子
講師 | 霜田 光一 氏(東京大学名誉教授) |
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日時 | 平成18年7月19日(水曜日)14:00〜15:00 |
場所 | 22−108(物理学科会議室) |
概要 | ふつう浮沈子は上昇すると水圧が減るのでますます上昇し、下降すると水圧が増すのでますます下降する。 そこで中間の深さで安定する 浮沈子は原理的に不可能であると考えられていたが、濃度勾配をもつ塩水では中間で安定化することができる。さらに温度勾配を与えると浮沈子は長時間自励振動する。 その実験のデモンストレーションと理論について発表する。 |
対象 | 物理学科3・4年生、大学院生、教職員、他学科聴講可 |
超伝導体中におけるミューオンの量子拡散
講師 | 大橋洋士 助教授 |
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日時 | 平成18年6月13日(火)15:00〜16:30 |
場所 | 14−203(セミナールーム3) |
概要 | 金属の最大の特徴はフェルミ面という「顔」を持っていることである。 この講演では、金属中に打ち込まれたミューオンの運動に対する伝導電 子の影響、及び、電子系が超伝導状態になった場合に見られる効果を実験、理論両面から説明、「フェルミ面効果」と呼ばれる金属電子系特有の現象を平易に解説する。 |
対象 | 物理学科3・4年生、大学院生、教職員、他学科聴講可 |
Grenoble及びDidcot滞在記
講師 | 田島圭介 教授 |
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日時 | 平成18年5月10日(水)14:30〜16:00 |
場所 | 22棟108号室 |
概要 | 昨年9月から休暇で滞在したフランス・グルノーブルとCNRSネール研究所、およびイギリス・ラザフォード-アプルトン研究所の様子を紹介する。 |
対象 | 物理学科3・4年生、大学院生、教職員、他学科聴講可 |